内容説明
幼くして東大寺で出家し、仏教教義の研鑽に身を捧げる。兄の桓武天皇が即位すると還(げん)俗(ぞく)して皇太子となるが、藤原種(たね)継(つぐ)暗殺事件への関与を疑われ、淡路配流(はいる)の途上、断食で死す。死後、その祟(たた)りが恐れられ崇(す)道(どう)天皇号を追贈されるなど、慰霊が永く続けられた。仏教面の業績や暗殺事件の真相を明らかにし、「怨霊」のイメージに隠れた人物像に迫る。
目次
はじめに/家系と生年(祖父施基親王/父白壁王と母和(高野)新笠/早良親王の生年)/出家から親王禅師へ(東大寺羂索院/大安寺東院/華厳宗と三論宗)/皇太子時代(立太子/長岡京遷都)/藤原種継暗殺事件(事件の概要/早良親王の忌日と死因/事件をめぐる議論/連座者と事件の背景)/早良親王の慰霊(慰霊行事の展開/陵墓と寺院/諸国正倉の稲倉と国分寺読経)/御霊信仰と早良親王(御霊前史/神泉苑御霊会/諸国御霊会と早良親王)/おわりに―早良親王小伝/天皇家略系図/藤原氏略系図/略年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
terve
24
桓武天皇の弟で、平安京遷都のキッカケを作った人物です。三大怨霊と呼ばれる人物に勝るとも劣らないほど慰霊に力を注がれた人物でもあります。藤原種継暗殺は冤罪であるとし、淡海三船などからその才能を賞賛されていたこと。また、東大寺で出家したことから、独自のネットワークを持ち、還俗しなければ高僧にもなり得たであろう点など、従来の「怨霊」のイメージを打破する内容です。とはいえ、「怨霊」という概念は後ろめたさが作り出した産物であり、後ろめたさを持った人物が偉大であるほどその霊威は大きくなるのでしょうか。2019/09/28
こぽぞう☆
15
図書館本。このシリーズは専門家が狭く深い知識で書くので当たり外れが大きいが、これはまあまあかな。最初の方の、仏教宗派の辺は哲学的で難しかった。早良親王と言えば「THE FIRST怨霊」な訳だが、「各種災害は冤罪で殺された人が怨霊になってやってる」という認識が意外と新しいのに驚く。いや、古いけど。当時としてはパラダイムシフトだったわけだ。巻末、天皇家と藤原家の系図が載っていたが、系図フェチとしては、大伴氏のも欲しかったし、天皇家と藤原家も、あとの世代までは載せて欲しかった。2019/11/11
ふたば
9
藤原種継暗殺の章読了。早良が首魁だった説、まったく蚊帳の外だった説、暗黙の了解説といろいろあるが、その後の桓武、平城の動向を見るに、蚊帳の外説が有力であろうかと考える。もちろん、素人の私見である。周辺の人物から見ていると桓武と言う人物はあまり魅力的には見えてこない。功績もあるのだろうが、反面あまり喜ばしくない行為も多々見られると感じる。人間的であると言われればその通りだが。事件が起こるまでの早良については後で読む予定なので、今のところ、この薄幸(たぶん)の親王の人となりにはまだ言及できない。2023/03/15
紫草
7
桓武天皇の弟。出家していたが兄の即位とともに還俗して皇太子に。なのに、桓武の子を次の天皇に立てたくなった藤原北家らにより無実の罪で死、というとてもお気の毒な方。とても丁寧に緻密に、引用文献や出典なども細かく挙げられていて、この本を基にさらに勉強を深めていくのにもってこいだと思います。出家時代については仏教の知識皆無の私には難しかった。最後の御霊会の話が興味深かったです。天皇や貴族たちだけでなく、諸国にも命じてみんなで早良親王の御霊を鎮めようとした。よっぽど身に覚えがあったんだなあと感慨深い。2021/07/17
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