ちくま新書<br> 天皇・コロナ・ポピュリズム ──昭和史から見る現代日本

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ちくま新書
天皇・コロナ・ポピュリズム ──昭和史から見る現代日本

  • 著者名:筒井清忠【著者】
  • 価格 ¥825(本体¥750)
  • 筑摩書房(2022/04発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480074775

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内容説明

コロナ禍の現代日本は、昭和の戦争へ向かった時代に酷似している。メディアの発展と普通選挙の実施でポピュリズム政治が横行。議会制民主主義への懐疑が広まり、天皇をシンボルとしたポピュリズム、民衆による下からの突き上げが起こり、日米戦に突入していく。なぜ天皇は利用されてしまったのか。強制力の弱い名ばかりの国家総動員体制は、いかにして天皇をシンボルとする社会の同調圧力、下からの突き上げで動かされたか。歴史を教訓に、我々はいま何をすべきかを問いなおす。

目次

はじめに
第1章 岐路に立つ象徴天皇制
バジョットが説いた民主制の意義
ジョージ五世と昭和天皇
戦犯論と新憲法
文化を強調した福沢諭吉『帝室論』
上皇の「警告」型を新天皇は踏襲するか
第2章 天皇周辺の「大衆性」──近衛文麿と宮中グループ
ともに過ごした青春の日々
三人を魅了した平等主義
貴族的「先手論」の限界
宮中グループと近代日本の蹉跌
第3章 戦前型ポピュリズムの教訓
憲政史上初の問責決議可決
天皇シンボルをめぐる抗争
「清新」な軍部や官僚の台頭
超越的勢力とメディアの結合
ポピュリズムに陥らないために
第4章 コロナ「緊急事態」で伸張したポピュリズム
情けない「国家総動員」
名ばかりだった近衛新体制
過剰同調・監視社会化
緩い法制とポピュリズム
専門家のあり方の再考を
第5章 ポピュリズムと危機の議会制民主主義──菅内閣論
突然の退陣表明
田中義一の教養
政治評価感覚の変化
派閥なきポピュリズム
非政党勢力とメディア世論の合体
議会制民主主義の危機
第6章 大正期政治における大衆化の進展
日比谷焼打ち事件と大衆の登場
大隈ブーム
朴烈怪写真事件
第7章 関東大震災と「ポピュリズム型政治家」後藤新平
第二次山本権兵衛内閣の成立
山本内閣と新聞世論、政党の動き
後藤・犬養と新党運動
新党計画の挫折
後藤攻撃と後藤の挫折
本章のまとめ
第8章 「大正デモクラシー」から「昭和軍国主義」へ
1 昭和超国家主義者の内面
超国家主義への移行をどう見るか──久野の丸山批判
伝統的国家主義の超越──橋川文三の超国家主義観
煩悶青年と北一輝の個人主義
超国家主義第一世代の悩み
血盟団員・菱沼五郎の軌跡
非合理的・非主体的な思考
宗教的な救済願望
ポストモダンな宗教的運動としての超国家主義
2 陸軍中堅幕僚の思想
陸軍の派閥と中心人物
辻政信の軌跡
近代的能力主義が太平洋戦争につながった
下克上の構造
第9章 太平洋戦争への道程とポピュリズム
国内危機の背景──軍人の不遇、恐慌
国外危機の起源──満州問題、国内に浸透する平等主義
政党政治への失望と「清新で中立的なもの」への待望
「バスに乗り遅れるな」──戦争の道へ煽るメディア
自由主義・議会制民主主義の重要性
終章 ポピュリズム型同調社会と政治的リーダーの形成
同調社会と日本文化論
農村から都市への同調型体質の転移
「バスに乗り遅れるな」
ナチスの電撃戦に熱狂した大衆
マスメディアが煽った強硬論
「世界情勢の大変革」認識
「都鄙の感覚」による世界の大勢への志向
政治的リーダーに必要な文明論的視野
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ほうすう

8
大まかに書くと大正から昭和戦前期を題材とした論考集。いくつかの章から成り立っておりそれぞれ緩やかなつながりはあるものの各章は比較的独立している。本としてのまとまりはともかく個々の章としては読みやすく面白いものであった。コロナ禍と戦前日本の共通点、下からの行き過ぎた全体主義に対する警告というのが多分一番言いたいことではあると思うしその点については異論はない。歴史学でありながら社会学的視点を持っていたのも面白い。本旨と異なるかもしれないが個人的には大正期の政争も面白そうだなと深堀したくなる要素が垣間見えた。2024/12/01

めっかち

4
 筒井清忠博士の論考集。ポピュリズムという観点からなされる昭和史と令和日本の分析はどれも興味深い。特に、昭和の「全体主義」とコロナ禍で進められた「自粛」という名の「全体主義」の比較は興味深い。なるほど、反日左翼諸君の言う通り、日本は戦前から何も学んでいないらしい。それから、筒井博士の問題としてあげるのは「革新的平等主義」。国内的貧富の格差と、世界的な人種差別に対する憤懣こそ、大東亜戦争への道を作ったと見るのは妥当だろう。2023/11/30

あるまじろの小路

4
大正時代から太平洋戦争に至る日本社会の動きと令和コロナ現象との共通点を探る、大変興味深い一冊でした。対米開戦で本格的に戦争体制に入るまでは政府による上からの統制は名目的なもので、むしろ世間の同調圧力によって個人の行動がコントロールされたという点は、まったく今のコロナに対する姿勢と同じでぞっとしますね。さらには、そんな国民の傾向を後押ししたのがマスコミの煽りであったという事実。本質的に日本社会は全く変わっていないことがよくわかりました。2022/12/06

鴨長石

3
コロナ禍は戦時中の空気に近いのではと感じていた。周りにあまりそのような見方をする人はいなかったが、ようやく同じような考えをする人を見つけた。最近は戦争を直接経験した人がほぼいなくなり、「一般市民は戦争を当時から嫌がっていた」という風潮が強いが、実際は対コロナと同じで、勝てない相手にもかかわらず戦ってやっつけようという空気だったのではないか。2024/11/01

バルジ

3
書名の通り昭和史を通して現代日本社会を考察する1冊。元は月刊誌等の論考であるが、正直各章によってそのクオリティに大きな差がある。著者の「ポピュリズム」概念が相変わらず不明瞭な為、字句通りに解釈するとやや混乱するが、ここでは「大衆迎合」という意味で捉えたほうが読み解きやすいであろう。政治シンボルとしての「天皇」や同調社会に関する論考は非常に興味深く、内容について首肯できる点が多い。しかひ田中義一と菅義偉を比較する論考は、政治情勢と来歴を過度に単純化している嫌いがあり、対比列伝として説得性に欠ける。2022/08/28

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