内容説明
戦争、災害、事故、感染症。その時、現場で何が起きていたのか?
ミッドウェー海戦から東日本大震災と原発事故、そしてコロナ禍まで「なぜこの国は重大事件が起こるたびに危機管理の戦略戦術の失敗を繰り返すのか」。
徹底的な調査と検証で、日本の組織を蝕む「負の遺伝子」をあぶり出す。危機の時代のゆくえを追う、渾身のドキュメント。作家活動50年間の総決算!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
121
半世紀近く「危機管理」に関わる発信を続けてこられた柳田邦男さんの集大成ともいえる一冊。メインは、コロナ対応、東日本大震災と福島原発事故だが、危機管理を放棄した原点が水俣病事件にあることを思い知らされる。危機に際しての政治家の言葉の貧困、官僚の事なかれ主義、企業経営者の無責任、現場に立たずに無罪判決を下す司法などが、ケーススタディを通じて明らかにされ、「組織事故」という社会の構造的な欠陥を浮き彫りにする。具体的で説得力のある説明に納得するも、この隘路から抜け出す光明が見えないもどかしさで暗澹たる思いになる。2022/04/10
サトシ@朝練ファイト
33
政治の言語崩壊・時々刻々の章を読むと為政者により国の内側から壊れていくのが一番恐ろしいと思うが、為政者を選ぶのは国民であると言うことを忘れてはならない。2022/05/14
まゆまゆ
17
新型コロナ感染症対応や東日本大震災といった災害が起こるたびに批判される政府の危機管理対応について語る内容。ドイツのコロナ対応との比較にがっかりしつつ、原発事故対応に打ちひしがれる。今だけ自分だけしか考えない政治家と官僚によって想定外が切り捨てられて想定すらされないことが本質ではないか。2022/08/18
ろべると
12
柳田邦男さんの航空事故などを扱った本は昔よく読んだ。綿密な取材をもとに冷静に真相に迫る内容に強く惹きつけられたものだ。近刊である本書では、前半では主に東日本大震災での原発事故を取り上げ、事前に警鐘が鳴らされていながら握りつぶし、事故発生後も予見不可能と開き直った東電や政府周辺の対応が告発される。後半はその勢いで当時の安倍政権がやり玉に上がり、怒りでヒートアップしているようにも感じる。前半が文藝春秋、後半は毎日新聞連載というのも面白いが、弱者に真摯に向き合おうとする柳田さんの一途な思いは十分に伝わってくる。2022/08/03
Ezo Takachin
6
現在、柳田邦夫氏のような存在感のあるノンフィクションライターはいるだろうか。日本人特有の危機管理の甘さを痛感するばかりである。昨今のコロナ対応での脆弱ぶりにも目を覆うばかりである。ドイツでの対応ぶりの比較されていたが唖然としてしまう。本書最後にある日本政治に対する分析はうなずくばかりである。政治不信と言われてすでに何十年。この先の日本は大丈夫であろうか?2024/04/20