内容説明
日本初の嫌韓女性総理が誕生し、ヘイトクライムが激化していくなか、立ち上がった一人の若者。彼と仲間が画策する禁断の「反攻」計画とは?第42回野間文芸新人賞受賞作。(解説:保坂和志)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Shun
35
排外主義が世論を占め嫌韓化が進んだ近未来の日本で、それを後押しするような内閣が発足し合法的に在日排斥が進行するディストピア社会を描く。国籍は違うが日本で生まれ日本語を話すのに差別されてしまう人々がいる。小説で構築された世界は写実的で、もしかしたらこれは現代日本の延長にある世界かもと想像すると恐ろしい。この歪みは双方の国の歴史とレイシズムが関係しているのだろう、本作で描かれるこの複雑な関係性の中で彼らのアイデンティティの描き方に注目するものがあります。社会派小説であり、物語は群像劇のような人間味のある内容。2022/03/16
セロリ
33
正直言って、この作品あまり好きにはなれません。結末が酷すぎるし、その結末しかないというような納得感がまるでない。世間に蔓延する人種差別と暴力の雰囲気は、容易にイメージできるが、それに対する太一や梨花の行動がわからないし共感できないのだ。面白かったのは、梨花の組織『青年会』内部でじわじわと力を奪われていく様子や、大久保守護隊の成り立ちやそのメンバーの生い立ち。この辺りをもっと深掘りして欲しかった。高い理想を掲げた組織も権力闘争があり内部から壊れるし、暴力集団にも情がある。そっちの方が物語として面白いと思う。2025/03/30
たまきら
30
女性“嫌韓“総理大臣が誕生し、「外国人排斥」が始まるーこの小説を今読まずにいつ読むんだ?決心して、こわごわ手に取りました。ヤン・ソギルを思い出しますーぞっとするほど暗い、怒りのエネルギーがこめられており、私たちは永遠に分かり合えないのではないだろうか、と読み進めるにつれ不安が募っていく。そうしてさんざん恨を聞いた後で、私たちは手放された、とまたうめくような恨が。あなたが私を竹槍で突き殺す前に…私は、だれ?国に誰を憎むか教え込まれる前に。声をあげられなくなる前に。強烈な一撃です。2025/12/08
shikada
16
初の女性総理による極度の嫌韓主義が吹き荒れる近未来の日本を描いた小説。坂道を転げ落ちるように激化していくヘイトクライムは、数年後に同じことが起きると言われたら信じそうになるリアリティがあって恐怖を感じた。排斥に耐えかねた韓国人たちが母国に帰国してもスパイ容疑をかけられたり、世論がふっと嫌韓から嫌イスラムに移り変わっていったりすることもいかにも起こりそう。あまりにも月並みだけれど、同じことを繰り返さないために、歴史を学ばないといけないと感じた 映画「HAPPYEND」を連想した。2025/12/11
naff1968
8
このタイミングしかあるまい、と再読。引きつった笑顔のあの人とか、オレンジ色のあの人とか、その熱狂的な支持者の皆様とか、読んでほしい人はたくさんいるけれど、まあその視界にすら入らないだろうな。 地道に少しずつ、積み上げて積み上げて、崩されてもまた積み上げて、きっとそれしかないんだろうけど、絶望感の方がきっと勝ってしまうんだろうな。キツイな・・・。2025/10/10




