内容説明
亡き母が作った精巧なドールハウスに隠されたあることに気づいた瞬間、世界が反転する「坂の上の家」。嫉妬深い夫の束縛に抵抗できない妻の秘密――意外な展開に震撼する「囚われて」。自分以外誰もいない“日常”に迷い込んだ女性の奇妙な心の動きを描く表題作など小説ほか、敬愛する三島由紀夫の美学、軽井沢の森に眠る動物の気配など、生と死に思いを馳せるエッセイを収録。耽美で研ぎ澄まされた恐怖世界に浸れるアンソロジー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
68
ホラー文庫に入ってはいるが、どちらかというと恐いと感じるより幻想的な短編が多く、幸せだった過去のひとときと現在のコントラストが強く表出されている作品群が鮮烈である。小池さんの作品は惹かれるものが多く、たくさん拝読させていただいてきたが、エッセイにはあまり触れていない。本アンソロジーのおかげで三島由紀夫の愛読者だということを初めて知ったように思う。2022/04/10
なっち
28
文芸評論家でありアンソロジスト(←こんな名称があったとは!)の東雅夫さんが選び抜いた掌篇小説とエッセイの融合。『幸福の家』と『坂の上の家』はかつて読んだことがあるかもしれないけど、小池さんらしい作品で満足。小池さんが三島好きなのは有名ですね。2022/04/09
cao-rin
24
【日本の夏は、やっぱり怪談】〈其の一・和編〉小池真理子さんの怪談が好きです。子供の頃、夏休みになると毎年母親の実家に行っていましたが、この家が私はとても怖かったのです。部屋の外の廊下にあった暗いトイレ、家の外のお風呂、黒く節だらけの天井、異様に大きな仏壇、そこでいとこ達から聞く怖い話の数々…そして小池さんの怪談を読むと、いつもその頃の思い出が自然と頭に浮かんでくるのです。淡く儚い郷愁のような、そしてどこか薄気味悪さを感じさせる怪談たち。「私の居る場所」、「カーディガン」が良かったです。2022/07/24
のぼる
19
ダイレクトに恐怖を感じるホラー小説も好き(ただし久しく出会っていない)だが、小池さんの描く『恐怖』はとても好み。今作はエッセイも入っており、その中で触れられていた『恋』は、題名だけで何となく避けていたが、是非読んでみたい。2022/04/13
reading
16
珠玉の怪奇譚集。時代の影響か、男に支配され隷属されている女の雰囲気が漂う作品が多い。中でも囚われてが面白い。坂の上の家では、母は今、墓石の下でぐっすり眠っているはずだ。人生などという厄介なものから、めでたくも永遠に解放されたのである。とあり、言いえて妙。狂おしい精神では、小池氏がいかに三島由紀夫に影響を受けたかがよくわかる。三島の偉大さに改めて感服する。2024/08/07
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