ちくま新書<br> 進駐軍向け特殊慰安所RAA

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ちくま新書
進駐軍向け特殊慰安所RAA

  • 著者名:村上勝彦【著者】
  • 価格 ¥825(本体¥750)
  • 筑摩書房(2022/03発売)
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  • ISBN:9784480074638

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内容説明

終戦からわずか3日後の1945年8月18日、内務省警保局から全国の知事に秘密の指示が発せられた。それは、進駐軍向けの性的な慰安所を速やかに設けよという指令だった。副総理が要請し、のちに総理大臣となる池田勇人主税局長が口利きして資金を調達したと伝えられる特殊慰安所RAA。日本人客は入れないその場所で働いていたのは誰だったか。RAAが閉鎖され、街に出た女性たちが国民から疎まれることになったわけとは。占領下にあった敗戦国、その裏側史を活写する。

目次

はじめに
第一章 治安と貞操
内務省からの無線通牒
慰安所設置指示の背景
国体護持への不安
進駐軍への不安
誰が慰安所を作らせたのか
設置は閣議決定だったのか
第二章 国が作った占領軍慰安所
一 RAAの結成
警視庁から正式な指示
RAAの業務
結成宣言
公費の出どころ
警視総監の自己正当化
二 女性集め
「進駐軍慰安の大事業に参加する新日本女性の率先協力を求む」
治安のための道具
政府のお金でやる会社
三 慰安所の開設
小町園の開業
RAAの特別待遇
押し寄せる米兵
第三章 「特別女子従業員」の仕事
一 昭和の〝唐人お吉〟
自殺した元タイピスト
「特殊慰安施設協会」世話役の説明
新日本女性が担った〝大事業〟の内実
続々と設置されたRAAの施設
二 甘言、泣き落とし、ウソ、連れ去り
日本人は立ち入り禁止
警察が主導した横浜
「女性たちを泣き落としにかけて集めまして」
「耐えがたきを耐えて、全日本婦人の盾となる」
「客は内外人を問わず均しくその需要に応じること」
慰安婦の収入
三 日本政府に裏切られた〝お吉〟たち
ほぼ同時代の、当事者たちの記録
各地の公的記録に見えるRAA
「御指摘の文書につきましては公式に引き継ぎがなされておらない」
第四章 立ち入り禁止
一 見て見ぬふりの米軍
問題は米本国の世論
性病の蔓延
占領軍人による強姦事件
報道されない米軍人の事件
二 オフ・リミット
性病予防の努力は日本政府機関
米本国で問題化、公娼廃止へ
警視庁の忖度
増える私娼宿
放り出された占領軍慰安婦
東京・日比谷公園、京都・円山公園
なぜ日比谷公園か
ラク町お時
パンパンのインタビュー
三 狩り込み
一般女性を拘束、強制性病検査
「街娼の正しい数を調べることは困難」
「貞操観念を捨てた女と軽蔑しないでほしい」
「はじめは嫌だったがすぐに慣れた」
四 アメリカンモード
モンペから洋装へ
アプレゲール
復興とパンパン
第五章 誰が街娼になったか
一 街娼の実態調査
酌婦という抜け道
平均的な結婚年齢より若い
長女が多かった
家族は娘の仕事を知っていたか
街娼のくらし
高い学歴
客を誘う街娼
二 街娼と世間
街娼の前職
「やけくそで」
街娼の収入
三 インフレと食糧不足
闇を食わない犠牲
闇米なしでは死ぬ時代
米よこせ運動
四 遊郭と街娼、世間の眼の差
「遊郭・娼妓」必要、「街娼・パンパン」不必要
世間の眼
基地の近くの子どもたち
母娘でパンパン
五 近現代日本人にとっての売春
芸娼妓解放令の抜け道
廃娼運動の高まり
売春防止法の制定
第六章 戦争と性犯罪
一 日本軍と慰安婦
東京裁判
日本軍の略奪・強姦
石川達三『生きてゐる兵隊』即日発禁
従軍記者の虐殺と慰安所の記録
国内の産業戦士にも慰安所
二 各国の軍隊と売春
ドイツ強制収容所の売春施設
ソ連領内での独軍
仏での米軍
ベルリンでのソ連兵
旧満州開拓団の女性が迫られた選択
第七章 真実を伝えること
進駐軍用慰安所の意味
時系列の中の事実
自己責任論の誤り
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

やいっち

71
日本軍が関わった従軍慰安婦については夙に知られているが、「終戦からわずか三日後の一九四五年八月一八日、内務省警保局から全国の知事に秘密の指示が発せられた。それは、進駐軍向けの性的な慰安所を速やかに設けよという指令だった。特殊慰安所RAAである」という事実はあまり知られていないのではないか。パンパンは映画にもなったくらいで世に知られているが、この特殊慰安所RAAはその前史のようなものか。2022/07/17

ばんだねいっぺい

35
玉音放送から3日後という手際のよさは、最早、事務方は、準備に動いていたということで、また、これは、日本軍の蛮行を占領軍に投影した措置だったということ。自虐史観などではなく、事実史観でなければ、外交もこじれる。大佛次郎の言葉を胸に変えていければいいのだが。。。 2022/07/17

松本直哉

31
国家による犯罪といってよく、立案・指示した近衛文麿と国庫からの支出を即決した池田勇人主税局長は売国奴の名に値する。閣議決定もなしに玉音放送の三日後に実行に移した経緯も、その犯罪性を裏付ける。体を張ってすべての女性を守ろうという気概もプライドもなく、嘘の宣伝文句で女性を誘い、性病流行で廃止されたあとは、彼女らの心身の傷を思いやるどころか、あとは自己責任と町に放り出す。思えば、この慰安所を契機にして日本はアメリカに、日本という国をまるごと、どうぞなんでも自由にお使いくださいとばかりに売り渡したのではなかろうか2022/07/03

Isamash

24
村上勝彦(元NHK記者、月刊マスコミ市民編集委員)2022年発行著作。進駐軍向け慰安所の大義名分は確か今村昌平監督映画で唱えられていて馴染みもあるが、近衛文麿元首相の指示下、知事に指令がなされ設置されたとは驚き。女性への国家的詐欺で人権無視の酷い話だが、日本女性を米兵から守ったことも事実かとは思った。日本軍が中国で婦女にめちゃくちゃなことをしているはまあそうだろうと思えるが、ロシア兵やナチス兵だけでなくノルマンディ上陸した米軍が仏女性に酷いことをしていたことは初耳。確かに真実に向き合うことの重要性には同意2024/04/17

ののまる

10
古地図をみていると、開国時に設置した外国人向け遊郭や、敗戦後の進駐軍向け慰安所の存在が記されていることがある。それにしても、ポツダム宣言受諾の3日後にすぐ作られた進駐軍向け慰安所。中国で自分たちがやってきたことが日本でやられると思った首脳陣の、女性を単なる道具としてしかみていないって意識って、今のじいさん政治家の失言にもそのまま残ってる。2024/07/21

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