内容説明
天売・焼尻島を眼前に望む北海道苫幌村唯一の商店は、中津順平が行商から興した店だった。妻のふじ乃は美貌と陽気な性格で店を側面から支え、娘の志津代は賢明に成長しつつあった。順平の留守のある日の深更、志津代は、庭から逃げる男を見た。月を経てふじ乃は男児を出産。この時から中津家の人々の人生は、暗転しはじめる。三浦文学の源流、二組の祖父母をモデルに人生の輝きと儚さを描く。(解説・難波真実 ※久保田暁一氏の解説は収録しておりません。)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
40
再読です。三浦さんのご家族をモデルにした人間ドラマでした。人生は何が幸せなのかわからないものです。だから迷いながら歩んでいくのではないでしょうか。幸せは決まった形があるわけではないし、後から気づくものなのかもしれませんね。儚くて輝く人生だからこそ、日々を丁寧に歩んでいきたいと思わされました。2024/10/04
優希
40
三浦綾子さんの家族がモデルになった小説のようです。人間の愛と哀しみが紡がれているように感じました。キリスト教の信者だからこそ、人々を深く掘り下げて描いているのだと思います。2022/06/17
ソーダポップ
36
「嵐吹く時も」は、人間の愛と苦しみのドラマを、より生々しく展開した作品である。この著書は、実に人間味に富んだ多彩な人物が登場する。そして、それぞれがキリスト教徒である三浦綾子さんが描く迷える羊として生き、嵐に吹かれながらも、愛し許しあって生きる世界を求めているのだと思う。その人物たちの言動と指向には深いリアリティがあるとともに、三浦綾子さんが、「嵐吹く時も」に注ぎ込んだ愛と祈りを感じとることが出来た作品でした。2022/05/28
綾@新潮部
28
明治時代から大正・昭和と変動の時代に、家族のありかたや小さな事件大きな事件を描いた壮大な話だった。主人公は志津代だが、その両親の生い立ち・両親の苦悩などが描かれ、そして志津代の少女時代から数十年が描かれている。解説含め670ページほどという長編だが、思ったよりは早く読めてしまう。人間は罪深い生き物だが、それだけではない。家族を思い人を思い、生きていく。それぞれの立場での成長もすごかった。特に新太郎には泣かされた。2024/02/20
チサエ
10
ほんとうの親子とはなんだろう。血の繋がり?育てた年月?絆?改めて考えてみるとなんてあやふやなんだろう。見えない縁を信じている。そして人はあやまちを犯しながら生きている。あやまったひとつのことが、その後の人生に大きな影響をもたらす。誰もがそうしたあやまちの中で生きているなら、人のあやまちも許せると思うけれど、案外、人のことは許せないのが人間関係というもの。『嵐吹く時も』、ほんとうに嵐吹く時も変わらない関係を築けたら良き。30年ぶりくらいの再読、当時は上下巻だったと思うけど合本になっていてありがたかったです。2022/07/04