内容説明
大学を卒業し、AP通信社で記者として働くジョーは、ある日、田舎町で起きたジョー・タルバートという男の不審死を知らされる。プレスリリースには凶行の疑いがあると書かれていた。死んだ男は、ジョーが生まれてすぐに姿を消した、顔も知らない父親かもしれない。ジョーは事件に興味を抱き、その町へ向かう。判明したのは、男が実父である可能性が高く、多数の人々の恨みを買っていたことだった。ジョーは真相解明に挑むが……。家族の秘密に直面する青年を情感豊かに描く、心揺さぶるミステリ。バリー賞など三冠に輝いた『償いの雪が降る』続編。/解説=若林踏
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
353
前作が面白かったので続けて読んだ。過去の精算と家族の再生にいちおうミステリーっぽい要素を足したような内容。一作目であれだけ荒ぶっていたキャシーが物凄い触れ幅で人格変わってやはりインパクト強め。謎解き要素のミックス具合は前作の方が上手かったかもしれないが、ドラマとしては全体的にこちらの方が劇的かも。なぜか刊行順に訳されていないのは、作風がかなり幅広く、そのせいでターゲットが定まらずに埋もれていかないようにという出版社の配慮なのだろうか。ライラが主人公になる作品もあるようなので、他作品も読んで待ちたい。2024/12/24
みっちゃん
167
またジョーに会えて嬉しい。就職もして、毎日きちんと生きてる。でも彼がこれからも人生を送っていくのに、そのままなかったことには出来ない事。顔も知らない父親の事。そして母親との確執の事。作者がこういう結末を用意してくれて、本当に良かった。教会でのシーンは思わず涙ぐんでしまう。ついついネガティブになったり、欲が出たり、調子に乗りすぎたり「おいおい、何やってんの⁉️」ツッコミ入れたくもなるけれど肝心の時には人間として全うで正しい事を選び取れるジョーが好きだ。二転三転のラスト、ミステリーとしての面白さも健在。2022/09/20
エピファネイア
137
「償いの雪が降る」の続編。原題は″The shadows we hide"なので、この邦題は1作目を意識したのだろう。主人公のジョーは記者になっており、母と訣別し、恋人のライラと自閉症の弟ジェレミーの3人で暮らしている。ジョーが書いた記事が名誉棄損で訴えられたことと、ジョーと同姓同名の男が殺されたとの記事が出たことで生活は一変。殺された男はジョーの父親なのか。今作ではジョーが金に目が眩んだりライラを裏切ったりしたが、もう一度チャンスをもらえてよかったね。次作はライラが主役とのこと。早く出版されるといいな。2022/07/11
ちょろこ
137
「償いの雪が降る」からの続編の一冊。ジョーの実の父かもしれない男の不審死。興味と共にその男の死の謎を解き明かそうとするストーリー。今回は丸ごとジョー。ジョーをこれでもかと言うぐらいに綿密に描き、読ませてくれた。謎解きの傍ら描かれるあの過去とそして彼を取り巻く現在、次第に明らかになる家族模様。特に母との問題に向き合う姿はジョーと共に心揺さぶられる感覚で読み応えあり。変わらずそばにいてくれるライラと弟ジェレミーの存在が、支えが実に良い。ジョーの随所での正直な気持ちも実に人間らしくて良い。また一歩、成長かな。2022/06/06
タツ フカガワ
125
前作から5年後の続編。ジョーは通信社の記者となり、司法試験を間近に控える恋人ライラ、自閉症の弟ジェレミーと共同生活を送っていた。弟の後見人になるにあたっては母キャシーと裁判で激しく争い、以来絶縁状態。そんなときジョーは自分と同名の顔も知らない実父が殺されたことを知る。さらに町で嫌われ者の父の実像とともに腹違いの妹がいること、そして父が数百万ドルの遺産を有していたことを知る。家族の崩壊と再生を背景に描かれるミステリーか、はたまたミステリー仕立ての家族小説かと思うほどの「前作に勝るとも劣らない読み応えかも」2024/03/04