ピラネージ

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ピラネージ

  • ISBN:9784488011116

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内容説明

僕が住んでいるのは、無数の広間がある広大な館。そこには古代彫刻のような像がいくつもあり、激しい潮がたびたび押し寄せては引いていく。この世界にいる人間は僕ともうひとり、他は13人の骸骨たちだけだ……。過去の記憶を失い、この美しくも奇妙な館に住む「僕」。だが、ある日見知らぬ老人に出会ったことから、「僕」は自分が何者で、なぜこの世界にいるのかに疑問を抱きはじめる。数々の賞を受賞した『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル』の著者が、異世界の根源に挑む傑作幻想譚。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

buchipanda3

94
幻想冒険譚。表紙絵の怪しさに思わず手が伸びた。その扉の先にあったのは未知であり未知でないような奇妙な異空間。古代像が立ち並び、無限のように連なる広間が海水に浸っている館に彼はいた。他には"もうひとり"しか人間がいないその世界は孤独で静寂で謎に包まれている。そこはミノタウロスの迷宮かボルヘスの館(執筆のヒントとなったらしい)か、モリミーの部屋か。酔うほどではないが異郷の中を語り手と共に手探りで探索しながら先の行方を追う。そしてあれを生み出したのはある事を忘れた人間自身なのではと思いながら物語から抜け出した。2022/04/17

藤月はな(灯れ松明の火)

69
潮が満ち引き、幾多にも意味を持つ古代彫刻がある広間。そこがピネラージの棲まいだ。彼は名もなき15人の遺体と暮らし、館に守られ、彫刻から天啓を受け、時折、訪ねてくる「もうひとり」と仕事をして過ごしている。最初、ピネラージの印象は「生まれた時から社会や他者と全く、接触せずに究極の無垢として育てられた人間」だと思っていた。ところが16人目のメッセージからきな臭さが明らかになる。そこでこの世界の幻想は掻き消えるかと思いきや、とんでもない。寧ろ、幻想とは真に全てが明かされないからこそ、心に残り続けるのだから。2022/06/07

帽子を編みます

58
この世界での彼の呼び名はピラネージ、果てることのない迷宮をさまよい記録する。広間に灰色の像が並び、一定のリズムで潮が満ち引く、この美しき館を愛し館に愛されし者。幻想世界を描いたものかと読んでいると違和感をもつ単語の数々、合成ポリマー、マルチビタミン、マッチ、寝袋?この世界と平行して存在する分流世界。世界の謎が少しずつ解決していく。彼は能動的にこの世界を選び、いつか戻っていくだろう。2022/07/05

ヘラジカ

54
読者を圧倒的な異空間へと放り投げ、物語の語り手と共に世界の霧を晴らしていく、この構成が幻想文学好きには堪らない。かの名作『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル』の作者が長いブランクを経て、前長篇とは違った結晶のようにコンパクトなこの傑作を作り上げたのだと考えると感慨深い。しかし、こちらもまた古典として語り継がれるだろう。迷宮はあまり掘り下げられず、大部分が謎のまま幕が降りるからこそ心に残り続けるのかもしれない。魅惑の幻想世界にまだまだ浸っていたかった。2022/04/13

あたびー

33
もったいないと思いながら頁を繰る手が止まらなかった。 東西南北夫々に千近い広間を擁する三層の館は、下層が海に浸り、上層は雲に覆われる。そこに暮らすのはピラネージ。他は「もうひとり」と言う男のみ。ピュアの塊のピラネージに対し、もうひとりは最初からどう考えても胡散臭い。 始まりは広大な屋敷世界でのお伽話だったものが徐々に謎を明るみに出してくる。 最後までドキドキが止まりませんでした!2022/04/15

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