内容説明
世界が始まり、悪狐が目覚める――。
人間離れした美貌を持ち、人を超えた才知をほこり、数千数万の軍隊を相手に戦うことができる強さを持つ、伝説上、最「恐」のヒロイン、玉藻前(たまものまえ)。しかし本邦には玉藻前を扱った作品が膨大に存在するにもかかわらず、広く読める現代語訳がありません。
本書は大の玉藻前好きであった著者が、「誰でも玉藻前に触れることができ、彼女の魅力を広めることができるならば」と、膨大な作品群を現代語訳で編んだアンソロジーです。
玉藻前の日本における活躍とその死後を描いた御伽草子『玉藻の草子』。殺生石と化した後、玉藻前の魂の救済を描いた謡曲『殺生石』。世界の始まりとともに生まれ、世界を魔界に堕とすため、中国、インド、日本の三国に渡った九尾の狐の暗躍とその脅威を描いた読本『絵本三国妖婦伝』。玉藻前が殺生石と化した後、その魂が救われるまでの空白の期間に起きた玉藻前に纏わる事件を描いた合巻『糸車九尾狐』。殺生石説話の主役である源翁和尚と殺生石に纏わる話を記した戦記物語『那須記』。
これらを現代語訳でお届けします。
付録エッセイに、「狐の窓」大屋多詠子(青山学院大学文学部教授)収録。
感想・レビュー
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ポチ
44
九尾の狐が中国から日本来て、玉藻前になったのは薄々知ってはいたが、妲己など中国での物語も知る事が出来良かった。どれほどの美人なのか一度お目にかかりたいな(^^)2021/11/27
びぃごろ
13
「玉藻前は九尾の狐で、殺生石となり怨念が残る」という知識しかなかった。何千年も生き中国、天竺と渡り、美しく知性もある姿で国主を惑わし、国を滅ぼしてきたとは。文楽「玉藻前曦袂」はまだ観ておらず、是非東京でも上演して欲しい。山東京伝の合巻「糸車九尾狐」はとても興味深く、三浦介に復讐するため、蝮婆の身体を九尾狐が借りるというもの。ここに袖萩祭文の話が出てきてビックリした。葛の葉や狐忠信の優しいイメージから対局にある玉藻前だった。2021/12/16
tama-nyan
2
玉藻前は博識で素晴らしい女性てことだよね?実際、過去の人達はどう思ってたんだろう。日本人って(外人の心理は想像も出来ないけど)相反するものを同一視する傾向がないか。善悪は単なる裏表。何にしろ明らかに外つ国の物語の妖狐と玉藻前は別人(別妖怪?)。2023/12/16
エリオちゃん
0
伯邑考のハンバーグの由来が想像以上にエゲツなかった。2021/10/23
風斗碧
0
楽しかった…。現代語訳、読み易くていいな。解説も細かいし、所々妖婦伝の挿絵が入っているのが嬉しい。『妖婦伝』は、やはり妲己編が面白い。九尾にしてやられた人たちが、現世幽玄取り交ぜて沸々と結集し、密かにマグマのように溜まってくる具合と、その爆発力が楽しいのだ。 『糸車九尾狐』は全く存在を知らなかった。『妖婦伝』続編の様で、九尾のしつこさというか、空恐ろしさがにじみ出ていて面白かった。これもまた妲己編の如く人の集結して来る話で、お能の『黒塚』や『安達ケ原』や『殺生石』モチーフに絡んでいるのもなかなか満足。2021/10/16