ちくま新書<br> 悪い言語哲学入門

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ちくま新書
悪い言語哲学入門

  • 著者名:和泉悠【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2022/02発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480074553

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内容説明

「あんたバカぁ?」「このタコが!」「だって女/男の子だもん」。私たちが何気なく使う言葉にも、悪い言葉がたくさん潜んでいる。では、その言葉は本当はどこが悪いのか? さらには、どうしてあの言葉はよくてこれはダメなのか? 議論がつきない言葉の善悪の問題を哲学、言語学の観点から解き明かす。読み終えると「ことば」への見方が変わるはず。

目次

はじめに
第1章 悪口とは何か──「悪い」言語哲学入門を始める
1 私たちは言語のエキスパートではない
日本語には「悪い」ことばがない?
言語について学ぶということ
2 悪口の謎
悪口の必要条件と十分条件を私たちはまだ知らない
悪口の必要条件
悪口の十分条件
謎1「なぜ悪口は悪いのか、そしてときどき悪くないのか」
謎2「どうしてあれがよくてこれがダメなのか」
3 言語哲学を学ぶということ
言語学と言語哲学
「正統派」言語哲学と「悪い」言語哲学
第2章 悪口の分類──ことばについて語り出す
1 内容にもとづいた分類
ディスクレイマー
筒井康隆のリスト
悪口の普遍性
2 形にもとづいた分類
このバカめが!
文法的用語
タイプとトークン
3 行為による分類
悪口の機能
言語行為論に触れる
第3章 てめえどういう意味なんだこの野郎?──「意味」の意味
1 意味を学問する
日常的な「意味」という語はバラバラのことがらを指す
「意味とは何か」という問いへの二種類の答え方
2 意味の外在主義と内在主義
ラッセル的命題
意味の公共性
可能世界の集合としての命題
概念(への指令)としての意味
3 意味が担う四つの機能
真理条件的内容と共有基盤
前提的内容
陰湿な共有基盤の動かし方
使用条件的内容
会話の含み
第4章 禿頭王と追手内洋一──指示表現の理論
1 武士を法師と呼ぶなかれ
御成敗式目
騎士の名誉
呼称とランキング
2 固有名
二種類のあだ名
クリプキ的理論
フレーゲ的理論
二つの理論の違い
3 確定記述
禿頭王と定冠詞
ラッセルの理論
日本語の問題
第5章 それはあんたがしたことなんや──言語行為論
1 語用論
統語論と意味論
意味論と語用論
2 言語行為論
行為としての言語
情報伝達の神話
「あんたバカぁ?」の発語(内
媒介)行為
罵りと悪口
バカにする・ランクづける
いつ罵りが軽口になるのか
第6章 ウソつけ!── ・誤誘導・ブルシット
1  つきは泥棒のはじまり?
 の頻度
何気ない ・善意の 
 は必ずしも悪くない
2  とは何か
欺瞞としての 
真っ赤な 
3  でなければいいじゃない
誤誘導(ミスリード)
ブルシット(でたらめ)
犬笛、隠語、その他の行為
第7章 総称文はすごい
1 主語がデカイ
総称文とは何か
総称文の特徴1 あいまいさ
トランプ流総称文の使い方
2 「だって女
男の子だもん」
総称文の特徴2 本質主義
名詞vs形容詞
ステレオタイプや偏見の表現
第8章 ヘイトスピーチ
1 ヘイトスピーチとは何か
ヘイトスピーチの基本的特徴
ランクづけとしてのヘイトスピーチ
2 「ヘイト」と「スピーチ」の概念分析
憎悪の神話
アリストテレスによる「怒り」と「憎悪」の区別
「スピーチ」未満
「言論」なのか
3 「蒸気船」としての言語
よく分からない「ことば狩り」
JapとJapaneseの違い
意味の公共性再び
おわりに──悪口の謎を解く
もっと勉強したい人のためのブックガイド
あとがき

参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

venturingbeyond

59
言語哲学及び言語学の枠組み・方法論と問題関心を、悪口・憎悪表現・差別表現を具体例に平易に叙述した好著。オースティンの言語行為論を下敷きに、権力関係の構築や再生産に寄与する言語使用を「悪口」・「ヘイトスピーチ」と位置づけ、コンテクストを無視した一律の表現規制が問題であると指摘すると同時に、言語の公共性の観点から、特定のコンテクストの下では、当人の悪意の有無とは無関係に、発言の責任を問うことができ、表現規制も可能とする結論も、本書の論旨を追えば、至極妥当なものと納得できる。巻末の文献リストもありがたい。2022/02/24

あやの

51
言語哲学の入門書の入口という感じ。教えてもらったことのある分野ではあるので興味深く読むことができたが、やっぱり難しかった。哲学的な考え方って、普段の生活ではあまりしないものねぇ。悪口とは、ヘイトスピーチとは何か、といったことを言語哲学的立場から考える。「意味の外在主義・内在主義」がポイントになるとか。あとは「総称文」がヘイトスピーチにつながっていくとか。この本の内容くらいから教えてもらってたらもう少し理解が深まっていたのになぁと、ちょっと残念。2023/06/17

ぴえろ

40
言語哲学という分野があるのを初めて知った。入門書とはいえ難しかったなぁ。悪口とは何か、悪口たるための必要十分条件。ねこはすごい、というような主語が大きい言い方(総称文)の取り扱いは要注意(よく聞くし使いがち)。言語を言葉で説明するのは難しい。2023/05/13

32
悪口を軸に言語哲学を説いていく。本来平等であるはずの人と人との関係に序列を作り、維持することが悪口の本質。なるほど…しかし難解だった。2022/12/22

よしのひ

32
「悪口とは何か」を哲学的に考えるというのが、すごく面白かった1冊。またそれだけでなく「ヘイトスピーチ」や嘘について、ここまで深く掘り下げて考えたことのなかった人生だったので、新鮮にも思えた内容である。普段「言語」を扱う仕事をしている+哲学にも興味があるということで、手に取った書物だが、まだまだ無限の可能性と興味が広がっていることを認識させてくれた。さて、日本語の、さらに現代の言葉も扱っていたが、今後どう変化していくのか大いに楽しみになった1冊でもあった。2022/06/09

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