内容説明
北斎、レンブラント、モネ、ダリ、ターナー、フリードリヒ、そして歳を取らない女・サイトウ。彼らは、救世主か? 破壊者か? 円城塔、歓喜! 驚愕の注釈小説の誕生。文藝賞受賞第一作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
64
風吹かば、財産が飛んでいくような寂れた村へ来た不老の女性、サイトウ。彼女は社を建立し、そこに北斎、レンブラント、モネ、ダリ、ターナー、フリードリッヒの6人の画の巨匠を奉った。社建立から村は栄えていくが・・・。テーマは「勃発後、信仰を失う宗教とその奇跡の加護」かな。最初の画匠達の註が説明だけじゃなく、物語と絡んでくる構成からして斬新。一方で画匠達がゴエンカナに吸収される時の註が生没年のみになるも趣深い。また、最初と最後の本文、巨匠達の作品がコラージュされたカバーもうねる様な世界観を目と脳に焼き付けてきます2022/05/29
rosetta
34
不思議な寓話、或いはマジックリアリズム。寂れた町に歳を取らない女サイトウが訪れる。幾世代の後に山の麓に神社を建てさせると途端に町は繁栄し始める。山の中では卵から六人の巨匠が誕生する。ある時サイトウが巨匠の一人に頼まれて長い旅に出、妊娠して帰ってくる。産まれた男の子はゴエントカと名付けられ、神々しく美しく育つ。やがてゴエントカは六人の巨匠を吸収して本物の神になる。しかし町の首長がそれを認めようとしないと天に昇ってしまう。そして町は再び荒れ寂れる。どんな意味を見出すかはあなた次第2022/03/28
みなみ
28
モネ、レンブラント、フリードリヒ、葛飾北斎、ターナー、ダリ、六人の画家が神として蘇り、山で暮らすところから始まる物語。注釈がそのまま本文に繋がっていく独特の文体で、読んでいて新鮮だった。作家として文体に注力した実験的なところもあるのだろうけど、この作品が結局何を意図しているのか、何を伝えたいのかがいまいち理解できないまま読了。注釈小説としては面白かったし、画家同士の交流も夢のコラボのようで楽しかった。2022/11/17
みつ
22
これは不思議な物語。年を取らない謎の女が石柱に6人の画家の名を彫ると、彼ら(モネ、レンブラント、フリードリヒ、北斎、ターナー、ダリ)が眼を覚まし、村で画を描き始める。突拍子もないが素晴らしく魅力的な舞台が整っているのに、あっという間に物語は終わりを告げる。冒頭の一文がずっと後で明らかになったり、注がそのまま本文に続いたり、最後の6つの注だけが違った意味を持っていたり、様々な試みがなされているが、そこだけが浮いている感じ。この舞台で6人の画家や謎の女サイトウを始めとする村人たちが生動する物語を読みたかった。2022/05/09
hide
19
北斎、レンブラント、モネ、ダリ、ターナー、フリードリヒ。彼らが登場する物語があるとしたら、どんなストーリーを思い浮かべるだろうか。想像してみる。一人の男が、あらゆる画家の絵の混じり合った世界にいる。その風景を小説に顕現させるには何が必要なのか。画家たちに神様として登場してもらうことだ。彼らは現代に神としてよみがえり、町を、彼らの絵画世界に染めていく。注釈が注釈を挟み込み、いつしか本編までも飲み込んでいく。何なんだ、これは、2023/02/08