講談社現代新書<br> スピノザ 人間の自由の哲学

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講談社現代新書
スピノザ 人間の自由の哲学

  • 著者名:吉田量彦【著】
  • 価格 ¥1,265(本体¥1,150)
  • 講談社(2022/02発売)
  • ポイント 11pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065273241

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内容説明

「本当に存在するのは神のみであり、人間を含め、その他のものはすべて神の<様態>に過ぎない」――一見、もっとも「自由」からはほど遠いように見えるスピノザ哲学が、自由こそは人間の「本性」と考えるのはなぜなのか? 政治的閉塞に被われた現代社会に風穴を開ける、もっともラディカルな思想の魅力を平易な文体で綴る。まったく新しいスピノザ哲学の入門書。
・「自然の権利や決まりとは、わたしの理解では、個物それぞれに備わった自然の規則に他ならない。あらゆる個物は、こうした規則にしたがって特定の仕方で存在し活動するよう、自然と決められているのである」(スピノザ『神学・政治論』第16章2節)。
・「スピノザが『神学・政治論』後半部で提示した政治哲学は、恐らくそれまでの西洋哲学史上類を見ないほどの徹底性をもって、わたしたち一人一人の「哲学する自由」つまり思想・言論・表現の自由のかけがえのなさを強調しています。しかもただ闇雲に大事だと叫びたてるのではなく、大事なものである理由を人間の自然権という、存在論的な基盤にまでさかのぼって徹底的に根拠づけようとしているのです」(本書第8回 自由は国を滅ぼすか――スピノザの思想<四>より)

目次

はじめに
第1回 なぜオランダで生まれたか――スピノザの生涯(一)
第2回 破門にまつわるエトセトラ――スピノザの生涯(二)
第3回 町から町へ――スピノザの生涯(三)
第4回 どんな著作を遺したか――スピノザの思想(一)
第5回 なぜ『神学・政治論』を書いたのか――スピノザの生涯(四)
第6回 なぜ「哲学する自由」が大切なのか――スピノザの思想(二)
第7回 聖書はどんな本なのか――スピノザの思想(三)
第8回 自由は国を滅ぼすか――スピノザの思想(四)
第9回 激動のオランダと『エチカ』の行方――スピノザの生涯(五)
第10回 神はわたしの何なのか、わたしは神の何なのか――スピノザの思想(五)
第11回 ひとはどういう生き物か――スピノザの思想(六)
第12回 ひとはどうして感情にとらわれるのか――スピノザの思想(七)
第13回 ひとは自由になれるのか――スピノザの思想(八)
第14回 彼は自説を変えたのか――スピノザの生涯(六)と思想(九)
第15回 「死んだ犬」はよみがえる――その後のスピノザ
おわりに
おわりのおわりに
謝辞
引用・参照文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

106
岩波書店さんからの全集刊行など、最近スピノザが注目されているように思える。國分功一郎先生は、個人・社会・自由・民主主義等の限界に直面する現代社会を先取りする思想として、踏み込んだスピノザ解釈を試みておられるが、本書は、生涯と著作をバランスよく紹介する概説書の位置づけ。強いて言えば、「神学・政治論」を「エチカ」の裏の主著として詳しく紹介しているのが特徴かもしれない。スピノザは、どうしてもホッブス・デカルト・ライプニッツとの対比で語られることが多いが、私は、この哲学者を「独創的な思考法の主」として吟味したい。2024/03/07

樋口佳之

66
スピノザ、高校の倫社以来触れるお名前です。その生涯と主張がコンパクトにまとめられていたと思います。全15章ってシラバスみたい。/条件反射で汎神論者って覚えていたけれども、社会契約論を超える所が新刊が続いている原因なのかな。/著者の読みに関わるのかもだけど、自己陶冶にかかわる議論がひどく論理に傾くなあ。理想は孔子先生の晩年の境地、禅の高僧が目指していることとそれほど変わらないと思う事に、このあくまで理詰めで迫っていこうとするところが西洋なのかなあと思いながら読み終えました。2023/05/03

おたま

49
國分巧一郎の『スピノザ』に続いて読んだが、こちらの方が圧倒的に分かりやすい。だが、内容が薄いわけではない。スピノザの思想を語るときに、『神学・政治論』(吉田量彦は新訳を出している)をスピノザの「裏の主著」として、『エチカ』を「表の主著」として述べている。つまり『神学・政治論』をかなり大きく取り上げている。この切り口が本書を分かりやすくしているのではないか。『神学・政治論』におけるスピノザの目指したものは「哲学する自由」であり、それは『エチカ』における「自由」の考え方に直結するものだ。2022/12/25

ころこ

47
同じタイトルで同じ400ページの新書が並んだ。國分の方が難関で、その5分の1位の労力で本書は読める。15回の講義形式で「です。ます」調に因るだけではない平易さが本書にはある。大きな違いは、國分がドゥルーズによるフランス現代思想の文脈を軸にして主に『エチカ』の読解をしているのに対して、本書は光文社古典新訳文庫の『神学・政治論』を訳した著者らしく、『神学・政治論』における哲学する自由の議論に重心を移している。著者自身『エチカ』を表の主著、『神学・政治論』を裏の主著と呼んでいる。率直に言って『神学・政治論』に現2022/12/07

加納恭史

32
「神学・政治論」をより深めて現代的に解説したのが本書。スピノザはハーグに転居して間もない1670年に、匿名で一冊の著作「神学・政治論」を刊行した。匿名で出したにも関わらず、すぐ大騒ぎになります。結果的に「神学・政治論」は四年後にオランダ全土で禁書処分を受け、スピノザもゆるやかな監視下に置かれた。オランダは他の国々に比べて宗教的・政治的迫害はゆるやかで、デカルトのような思想家が20年以上暮らせた国てす。しかしオランダの「寛容さ」は、じつは宗教勢力と政治勢力のきわめて危ういパワーバランスの上に成り立っていた。2023/05/14

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