河出文庫<br> いまファンタジーにできること

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河出文庫
いまファンタジーにできること

  • ISBN:9784309467498

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内容説明

『指輪物語』『ドリトル先生物語』『少年キム』『黒馬物語』など名作の読み方や、ファンタジーの可能性を追求する評論集。「子どもの本の動物たち」「ピータラビット再読」など。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

活字スキー

24
【未熟な人たちは、これは良い、これは悪いという確信を渇望し、要求します。このわかりにくい世の中で、彼らは自分が勝ち組にいると感じたいのです】多くの受賞歴を誇り、多くの創作家たちに多大な影響を与えたアーシュラ・K・ル=グウィンが晩年に自作や思い入れのあるファンタジーについて語ったエッセイ集。『Cheek by Jowl』という原題がうまく訳せなかったそうで、ちょっとタイトルから予想した内容とは違ったものの、偉大な作家にして読書家で評論家でもあった彼女の人柄、ファンタジーに対する思いなどが知れて良かった。2023/07/25

コニコ@共楽

13
『ドリトル先生アフリカへ行く』を読むにあたって、ル=グウィンの「子どもの本の動物たち」を読む。ファンタジーという特定のジャンルに限らず、人間と動物の物語は数多く綴られてきた。ル=グウィンはヒトと動物に特別な境界線を引かずに動物には動物の言葉を翻訳する本を見出すことが大切だといっている。ディズニー映画で描かれている『バンビ』ではなく、原作の『バンビ』や『黒馬物語』を読んでみたくなった。彼女の書いている『空飛び猫』シリーズも気にかかる。メッセージありきのファンタジーではなく、物語にこそという彼女に力を感じる。2024/05/17

roughfractus02

11
ファンタジーは人類最古の文学形式だと著者が言う時、トーテミズム的なさまよいの物語が念頭にあるようだ。また、ファンタジーは子供の物語でも戦いの物語でもないとされる時、自己と対象、善と悪の対立を設けない関係と結び目からなる物語がモデルにある。それは関係しか語らない夢や動物のコミュニケーション構造に近い。政治や心理や神学の寓意を物語に読まないように警告するのも、多様な関係を固定させないためだろう。敵と対立を前提とした物語から離れたファンタジーは、狩猟採集社会以降発達を止めた脳の構造にフィットするのかもしれない。2024/01/31

nanao

9
ハリポタ評(くさし)に頷きつつ読んだ(笑)。自分も、面白いけど目新しくはないと思ってたから。善悪対立のファンタジーに「異世界は暴力が許される装置ではない」との指摘は流石。「ウォーターシップダウン〜」を例に示唆された、ときにはリアル味の濃い物語の方がエンタメに振り切ったものより偏見を植え付ける危険に納得。支配者に都合のいい理屈を安易に「本能」と見做すことの危うさは昔からのフェミニスト(あえて言う)の主張だが、現代でも通じると思う。「本能」やDNAの単語は科学の領域なので安易に使うべきではないと思っている。2025/02/10

聖龍

5
エッセイ集。ファンタジーを読むことに少し恥じらいを感じていたが、それが反知性主義的な野蛮な考えであることを教えてもらった。ファンタジーは幼稚でも、現実逃避的なものでもない、ファンタジーは善と悪との真の違いを表現するのに役立つ道具である、より大きな世界を手に入れるためのものであるとのこと。また物語の言葉に全身全霊を傾けて、あなたの物語を見つけることが大切、決して象徴的な言葉で内容を纏め、物語世界を矮小化してはいけないと。耳に痛い。動物物語に関する論考も素晴らしく、そこに取り上げられた本を読んでみたいと思う。2024/02/14

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