内容説明
一人三役の奇妙な殺人事件+非モテ男の残酷な恋
「私はこの事件の犯人であり、探偵であり、そ してどうやら被害者にもなりそうだ」。
非モテ の三流物書きの私は、八年越しの失恋の腹いせに想い人の風邪薬を盗み〝毒殺ごっこ〟を仕組 むが、ゲームの犠牲者役が本当に毒死してしま う。
誰かが有紀子を殺そうとしている!
都筑 作品のなかでも、最もトリッキーで最もセンチメンタル。胸が締め付けられる残酷な恋模様+ 破格の本格推理。
史上初の文庫連載、幻の「ア ダムと七人のイヴ」第2話も特別収録。
イラスト シマ・シンヤ
〈目次〉
猫の舌に釘をうて
アダムと七人のイヴ 第2話 SCUBA DO,OR DIE
解説 法月綸太郎
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nemuro
51
密かに進行していた(単に私が知らなかっただけのこと)「徳間文庫41年目の本気【トクマの特選!】」の一環と思われる復刻シリーズ「都筑道夫・初期トリッキー長篇」の第2弾。読了後、法月綸太郎氏の「解説」で「1961年6月、推理小説専門の叢書としてスタートした『東都ミステリー』の5冊目として刊行された」ことを知り、それほど以前の作品だったのかと驚いた。感想を書くにあたり何頁かをパラパラと振り返り(ようやく)ラストの仕掛けに気付いた(発見したというべきか)。う~む。かつてここまで見事に騙されたことがあっただろうか。2023/10/26
mihya
47
倒叙トリック?どこがよ…と思って読んだ。そうきたか。 猫は出てこなかった。舌に釘をうたれる猫は出てこなかったよ!2024/04/05
koma-inu
39
61年作の復刊。1人称者が犯人=探偵=被害者の三役を担う。明らかに「信用できない語り手」の記述から、いかに真相を見抜けるか、という野心作。「読者への挑戦状」が挟まれるも、それすら、疑ってかかってしまいました。結末のブラックさも印象的!新本格ブーム10年前に、こんな巧みな(バカミスな)話を作った作者は偉大です。題名は、全くお話に関係ないです、最後まで回収は無かったような・・。同じキャッチコピーの海外某作品が、この1年後に出たそうで、なんともスゴイ偶然です。2022/05/23
マムみかん(*感想は風まかせ*)
25
60年以上前の作品だし、女々しい主人公の手記という形なので少々読み難い。 でも、今でもすごく斬新な超絶技巧! タイトルからは想像つかない内容だったけれど、猫好きさんも安心して読んで大丈夫(笑)☆2023/09/19
有理数
15
「私はこの事件の犯人であり、探偵であり、そしてどうやら、被害者にもなりそうだ。」という書き出しで始まる、奇妙な本格推理。この書き出しについては知っていたので、どんなトリッキーな技が飛び出すかと思えば、「風邪薬だと思ったら毒薬だった」という事件の幕開けも面白いし、意外と中盤までは本格推理らしい本格推理である。だが、終盤は――めっためたにメタフィクションで、よくそんなことを思いついたなあ……と感心してしまう。書き出しの文章に偽り無し。「猫の舌に釘をうて」というタイトルもカッコイイ。2022/03/28