内容説明
明治維新を迎え、世界に近代国家としてデビューした日本。内実は多くの問題を抱えていた……。西郷隆盛、大久保利通、伊藤博文、山縣有朋をはじめとする、薩長による藩閥政治の巨大な壁にも怯まず、テロに遭い片足を失っても、信念のために邁進する大隈重信。国会開設、政党政治移行、内閣総理大臣就任、そして早稲田大学創設。後の日本の礎を築いた偉人の生涯を描く歴史巨篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
245
上巻での立身出世への疾風怒濤が鮮やかだっただけに、下巻の新政府内での権力闘争だらけの右往左往には辟易してしまう。これも史実だから仕方がない。維新三傑(西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允)や、佐賀藩の仲間たちが道なかばでこの世を去る中、世界平和·政党政治·大学教育を生涯目指し続けた、大隈重信を描き尽くした力作。自由独立の精神を持つ国家と国民を夢見た大隈さんは、あの世で、今の日本の姿をどう見ているのだろう。2022/09/02
starbro
220
先月の上巻に少し遅れて、下巻を読みました。上下巻、800頁強完読です。明治、大正と激動の時代を駆け抜けた傑物、大隈重信、早稲田大学の創設者としては有名ですが、首相を2回も経験した偉大な政治家の部分が今日あまり認知されていないのは、薩長の陰謀でしょうか?それもあって、早大OBの著者はこの作品を執筆したのかも知れません。 余談ですが、私は旧山県有朋の邸宅跡、椿山荘で四半世紀ほど前に結婚披露宴を行いました(笑) https://www.chuko.co.jp/tanko/2022/01/005490.html2022/02/02
とん大西
123
大隈重信…なんともマルチな、稀代の傑物です。非業の死をとげた西郷や龍馬、世を退いていた慶喜。ドラマチックな彼らとは一線を画し、維新後の日本を実務的に支え続けた献身っぷりは正に威風堂々の英傑。大隈の長きにわたる活躍がなければ「近代化」という言葉さえ根付いていなかったやもしれません。幕末から大正へ。政敵、恩師、朋輩…大隈の生涯での交わりを俯瞰した時、裕仁皇太子が登場してくるあたりは遠い「歴史」が「現代」と地続きであることを感じさせてくれます。2022/05/14
のぶ
96
下巻は明治3年から始まった。その時、大隈32歳。近代国家として発展させていくのに、日本は多くの問題を抱えていた。大隈は佐賀から東京へ移り、政治家としての実力を発揮してくことになる。自分が本作を読む前の大隈重信に対しての知識は、早稲田大学を創設した事と、総理大臣を経験した事程度しかなかったが、読んでみると、多くの人物と交渉を重ね、信念を曲げない太い筋の通った巨人であることがよく分かった。現在の政治家もこの時代の流れを汲んでいる事が感じられ、長かったが、読んで良かったと思わせる作品だった。2022/01/24
ぶ~よん
79
今年刊行された大隈重信の歴史小説。最初に書くけど、早稲田関係者の必読書。母校の創設者のこと、皆知らないでしょ?佐賀藩士の長男、八太郎は幼少から藩の教育方針に反発し、蘭学から英学へと近代化への学問を積極的に学ぶ。喧嘩っ早く、耳学問が得意。実務能力に長ける一方、西郷隆盛に比べて求心力に劣る。木を見て森を見ないと福沢諭吉に諭される。伊藤博文ら政敵とは、くっついたり離れたり。戦争や植民地化に反対し、日本初の鉄道敷設計画を企てた。幕末、明治維新、新政府、時代の過渡期を大隈視点で駆け抜ける、凄まじい熱気を帯びた作品。2022/10/04