内容説明
人生の曲り角を迎えた中高年を描く17篇。
――世間というものはおそろしいな……庭をちょっと作り変えれば、どこかおかしいと思われるし、他愛のない絵を描けば変態扱いか……そういう自分たちの、どこが正常だと思ってやがるんだろう――
定年前後の男たちが、庭の作りかえや裸婦画、プラモデル作りなどに熱中するが、周囲にはまるで理解してもらえない悲哀を描いた「積み木あそび」、ナイフやフォークを持つときに相手が小指を立てていたという一事で見合いが流れてしまう「小指」、病気で倒れたお偉いさんのため、好物だという鰻を熱々の状態で届けたが、どんでん返しに遭う「鰻」などなど、中高年の悲喜劇17篇を収録した名作短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ほう
26
1988年に文庫化されたが、P+Dブックスとして再現された一冊。短編17集が収められていて読みやすい。「そのドアを通って」が印象に残った。映画のワンシーンのような展開と、その後に含みを持たせるような描き方が大人の物語を感じる。2022/08/09
たかひー
1
★★★2023/02/23
CEJZ_
1
1P17行。元の本は1985年刊。17篇の短篇集。かんきたくろうは第90回直木賞受賞作家で、作品は初めて読んだ。昭和の名作を安価で毎月刊行する、小学館P+D BOOKSというレーベルは好きで時々チェックしている。HPのweb試し読みよりも、書店で現物を手にとり検討して買って読みたいと思っているが、P+Dの紙の本を置いている書店は少ない。一つ一つは短いが、サラッと読めて味わい深かった。80年代、中高年の悲喜こもごも。ケータイやネット、SNSのなかった昭和も良かったなあと懐かしむ。この作家を知れて良かった。2022/06/03