内容説明
孝とは、親を大切にすることで、儒教の基本的徳目だ。律令で孝行者の表彰が定められ、七一四年に最古の例が見られる。以来、孝子は為政者から顕彰され、人々の尊敬を集めた。特に江戸時代は表彰が盛んに行われ、多くの孝子伝が編まれた。明治に入り教育の中心に据えられるが、戦後、軍国主義に結びついたとして否定された。それは常に支配者の押しつけだったか。豊富な資料で「孝」を辿り、日本人の家族観や道徳観に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
田中峰和
6
儒教とともに入ってきた親孝行の考えだが、江戸時代になって朱子学とともに見直され、一気に定着し、孝行ブームとなった。親への孝行は絶対的な美徳とされ、幕府や藩も積極的に奨励した。孝行で表彰された人は4万人もおり、有名な孝行者の家には観光客まで訪れサインをねだられたという。明治期は孝行から天皇への忠誠心へと導かれ、皇国思想への洗脳に利用された。子どもには教育勅語を覚えさせ、全体主義へ、戦争へと駆り立てて行った。教育勅語は軍人勅諭へと姿を変え、やがて敗戦。戦後、個人情報保護の観点から孝行への表彰は困難になった。2022/02/26
coldsurgeon
5
親孝行という行動に否定的な想いはない。しかし、その「孝」を誉めそやす風潮は、古代日本に持ち込まれ、律令政治の開始とともに、歴史の中に流れ始めた。国が「孝行」を褒章するのは、支配体制の忠誠を高めるために行っていた様子である。親孝行は個人的な行為であるが、表彰されると、政治的なシステムと結びついて公のものとなり、最終的には収めている政治が優れている証になると考えたようだ。そして今でも、そう考えている処は多いのだろう。2022/04/14
kenitirokikuti
5
あとで再読▲「獺祭」。水獺すいだつカワウソは一月に魚を取り親を祭るといわれ、孝行である。獺祭ってそういう含みなのね。他方、フクロウは母親を食う俗信あり、不孝である▲江戸時代、孝行者はかなり派手に表彰された(将軍マター)▲明治天皇は慶應4年4月に初の孝行者表彰を行った。明治14年、褒章条例。孝行者は「緑綬褒章」、しかし明治のうちに実業家も対象となる。戦前に孝などの徳に表彰されたのは160人ほど、戦後はたった3人。2002年に栄典制度改革あり、緑はボランティア対象となった。2021/12/05
茶々吉(パーソナリティ千波留)
3
2022年1月19日放送の みのおエフエム「図書館だより」で紹介するために読了。多分自分では絶対に選ばないジャンルの本。仕事だから目を通したが、申し訳ないことに全く興味が湧かず、読むのが本当に苦しかった。2022/01/08
いぬたち
3
儒教の思想の一つである親孝行という考えがどのように敷衍していき変質を遂げて現在に至るのかを書いた一冊。江戸時代には孝行をなすものを表彰することで身分に関わらず讃えられたようだが明治から最近に至るまでには孝行の意味合いも変わっていき戦後は軍国主義の思想として一旦は途絶えるが最近では作文という形で再興の可能性が出てきたという事。書き方も分かりやすく内容もそこまで難しいものではない。結構たのしむ読む事が出来た。2021/12/09
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