内容説明
「お前んち、いっつもええ匂いするのう。」
そう言った転校生のコジマケンが気になる緑は、まだ初恋を知らない十四歳。
夫(おじいちゃん)が失踪中のおばあちゃん、妻子ある男性を愛し緑を出産したお母さん、バツイチ(予定)子持ちの藍ちゃん、藍ちゃんの愛娘、桃ちゃん。
なぜかいつも人が集まる、女ばかりの辰巳一家。そして、その辰巳家に縁のある、謎の女性棟田さん。それぞれの“女”が抱える、過去と生き様とは――。
第一弾『こうふく みどりの』は、大阪のとある街を舞台に、様々な形の“女のこうふく”を描いた、西氏渾身の一作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
❁かな❁
216
やっぱり私は西加奈子さん大好き♡この作品も色んな女性の気持ちに寄り添いながら読ませてもらいました*西加奈子さんの作品を読むのは20作目。14歳の緑ちゃんが主人公。途中で色んな女性の視点が入ってきて段々それがわかるのが良かったです*私は他の人の視点でウルウルしました。大阪出身の私でも使わない濃い大阪弁で描かれてますが、そこも西さんらしく、とてもリズミカルで読みやすいです♪それぞれ深い想いを抱えていたり、人を愛することを描かれていて何度も何度もポロポロ泣いてしまいました。とっても温かい西さんらしい素敵な作品♡2016/07/25
ケイ
127
一番業の深い女はあの人だったんだ。名前を背負い、その名を叫んで号泣する羽目となった女の心は地獄だったろう。そんな女に腹から怒られたらやめろよ、と思う。私も加勢して、殴ってやりたい女のだらし無さ。西さんの話は、いつも性が絡む。性が幼い頃から身近に蔓延って、思春期に入る頃には絡め取られ、ほぼもれなく足を踏み外していく。私は、そんな修羅場と縁遠くて想像し難く、西さんのお顔と合わないなと思いながら、敢えて西原理恵子漫画の世界を想像して読んでいた。そうしたら最後に2人のお話。やっぱりそっちの世界なんだな。2022/05/21
さてさて
108
大阪のとある街を舞台に描かれたこの作品は、女性の力強さを感じる物語でもありました。さまざまな事情を抱える彼女たちには、その逆境を跳ね返し、それでも生きていこう、前へと進んでいこうという力強さ、たくましさがありました。そんな彼女たちの日常が淡々と描かれたこの作品。『こうふく』とはなんだろう、人として生きていく中でのそんな根源的な問いかけを改めて意識する機会を与えてくれた、そんな作品でした。2020/11/05
hitomi.s
88
再読。そして、今更にして、カバーのイラストがいくえみ綾だと知りトキめく。この淡いような恋なのかなんなのかわからない気持ち。大人になってきた間にあった出来事やおもってきたこと。ひとりひとりに、それぞれがあって、当たり前だけど、それが今私の目の前の風景だ。それって凄くでっかい事なのではないかと、少しだけ緊張しました。そんな今年の1冊目。2019/01/05
hit4papa
81
祖母、母、いとこ+その娘と暮らす、14歳の中学生 緑の日常を描いた作品です。生活感あふるる人々が活写されています。ご近所との気の置けないお付き合いは、まるで昭和な雰囲気。ワケありな人々の快活な生き様が愉快ですね。主人公の友情、恋愛(コジマケン=児島”犬”って!)、親子関係の悩みに初々しさを感じます。所々、挿入される謎のモノローグは、本編とどう合流するのか、興味津々で読み進めました。ただ、全編大阪弁なので慣れるまでに時間がかかりちょっと苦戦です。「こうふく あかの」と同様、プロレスLOVEなわけね。2019/08/08