次なる100年―歴史の危機から学ぶこと

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次なる100年―歴史の危機から学ぶこと

  • 著者名:水野和夫【著】
  • 価格 ¥3,960(本体¥3,600)
  • 東洋経済新報社(2022/01発売)
  • ポイント 36pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784492444658

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内容説明

近代はどう終わるのか、「第2の中世」は到来するか
圧倒的なスケールで説く、水野「文明史観」の決定版!

【内容紹介】
13世紀以降の社会は「数字(利益)は嘘をつかない」という前提の上に成り立っている。「神は嘘をつかない」という前提で成り立っていた中世キリスト教社会が崩壊していったのは「神が嘘をついた」からであって、人々は来世の天国よりも現世の暮らし向きが年々よくなっていく資本を信じるようになった。そこで、13世紀に教会は利子を認め信者を引き留めた。ところが、21世紀になって、「数字は嘘をつかない」という前提が揺らいでいる。現在は13世紀の身分社会以上に所得の不平等が広がっている。(略)

「21世紀の社会はいかなる方向に向かうか」であるが、社会の在り方は中心概念になにを据えるかで決まってくる。社会の仕組みの中心概念は、21世紀においてはもはやコイン(硬貨)ではない。イコン(聖像)が嘘をついたので、嘘をつかない数字を人々は信じるようになったが、そのコイン(資本)が嘘をつくようになったからである。所有権の概念や株式会社制度を見直し、ケインズのいう「明日のことなど心配しなくてもいい社会」を構築する必要がある。

ゼロ金利社会になって、ようやく日本人は働け、働けという強迫観念から解放され、人間の本質について考える時間を手に入れた。瞑想しても人間の本質はわからないので、「古典」あるいは芸術を学ぶ必要がある。ゼロ金利とは現在と将来の時差がなくなって、現在も将来も同じ価値となったことを意味する。将来もっとよくなるのではなく現在が最高なのである。すなわち、「より遠く」の将来ではなく「より近く」の現在に高い価値が与えられる。「資本の時代」が終わり「芸術の時代」が到来する。「より近く、よりゆっくり、より寛容に」が新たな行動原理となる社会が到来するであろう。(本書「はじめに」より要約抜粋)

目次

はじめに
序 章 「長い16世紀」と「長い21世紀」──「常態」と「例外」の転倒
第1章 ゼロ金利と「蒐集」──「西欧史」とは「蒐集」の歴史である
1:蒐集(コレクション)の歴史の終わりを意味するゼロ金利
2:崩壊寸前の近代「非公式」帝国・米国
3:21世紀の「歴史の危機」
第2章 グローバリゼーションと帝国──グローバリゼーションは資本帝国建設のためのイデオロギーである
1:近代を招き入れた中世のグローバリゼーション
2:ポスト近代を招来させる21世紀のグローバリゼーション
3:帝国の時代における支配と被支配の関係──債権と債務
第3章 利子と資本──数字(利益)が?をつくと近代秩序は維持できない
1:いかにして「中心」に利潤を蒐めるのか──進歩がつくりあげたマモン
2:一体いつまで「不正なものは公平である」と偽り続けるのか──ROEvs.地代
3:消費か投資かどちらを重視すべきか──いまを楽しむかvs.将来に備えるか
終章 「次なる100年」はどこに向かうのか?──資本の時代から芸術の時代へ
おわりに
参考文献
事項用語一覧
人名用語一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ehirano1

78
「ゼロ金利≒資本に価値が無くなっている」、つまりこのような状況で経済成長を求めること自体が矛盾というか間違い。ではなぜ経済成長を求めるのか?それは、成長さえすれば現在の困難から脱却できると信じる『近代成長教』に憑りつかれているから、とのこと。ん~、興味深いです。2025/04/04

ta_chanko

23
古代は土地、中世は霊魂、近代は資本を蒐集した時代。現代において、日独仏などでゼロ金利状態になっているのは、もはや資本に価値がなくなっているということ。資本主義に変わるポスト近代への転換期=長い21世紀(1971年の金ドル交換停止から)。投資しても儲からない中、ショックドクトリン・バブル・労働者や従属国からの搾取によって富が吸い上げられ、一部の資本家や国家に富が遍在。格差が拡大して人々の不満や絶望感が高まっている。この危機を乗り越えるには価値観の転換が不可欠。「より近く、よりゆっくり、より寛容に」。2022/04/05

くらーく

8
予約していた本だが、借りるときに驚いた。辞書かと思いましたよ。本文で752ページ、索引と注釈で175ページですよ。いやー、GWは本書を読むので潰れたわ。 それで、読む価値はある。ただ、歴史のところは、個人的には不要だったな。たぶん、歴史を振り返り、現在を見つめ、将来を予想?する内容なのだろうけど、ケインズだけでも良さそう。 基本的にはグラフや表を見て、興味を持ったところの説明を読むと良いのでは。3章と終章は興味深い。利子率と利潤率なんて、現役サラリーマンは怒り心頭だな。成長無くして分配あり、です。 2022/05/06

田中峰和

7
四半世紀続くゼロ金利が人類史においていかに特異な出来事かを著者は着目する。資本の増殖率を測るのは利潤率、つまり利子率。ゼロ金利が長期化するということは、資本の増殖が止まるということだ。それは商品やサービスが供給過剰になった結果。供給過剰になり、もうけが出ない時代、別の方法で富を増やすしかない。結果、労働賃金を抑えて生産コストを下げ、電子・金融空間での取引にたよっても繁栄にはつながらない。著者は悲観的に考えず、ゼロ金利になったのは、資本主義を卒業した結果と捉える。ストックを回す経済への意識転換が必要だ。2023/11/21

takao

4
p.9 資本主義は歴史上資本の最も優れた「蒐集」システムである p.16 ゼロ金利が長期化すると、資本主義も終わることになる。ただし、実物投資に限る。 2022/08/10

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