内容説明
なぜ日本は新型コロナの感染を食い止められないのか.二〇二〇年初頭,集団感染の発生した永寿総合病院,ダイヤモンド・プリンセス号から,デルタ株に襲われる第五波までの約七〇〇日間,各地の対応現場を克明に取材.緊急対応を続ける医療従事者や,最前線で拡大をくいとめる自治体・保健所スタッフの声から,あるべき対応を模索する.
目次
まえがき┴第1章 永寿ケース┴混乱する現場へ/流行曲線/最初の患者/アウトブレイク/最悪の事態/院内感染とPCR検査の不備┴第2章 保健所と首長たちの苦闘┴県庁のいちばん長い日/和歌山モデルの誕生/国策で縮小されてきた保健所/東京――「夜の街」の烙印と反発/感染症対策緩和ムードの中で┴第3章 ダイヤモンド・プリンセス号で何が起きたのか┴クルーズ船,着岸/制度通りでは救えない/病院のベッドをどう確保するか/エクモを使える医者はどこにいる/医療機関情報をネットで公開/患者をどう割り当てるか――「神奈川モデル」┴第4章 沖縄,夏の試練┴リスクに基づいた判断/感染拡大の火種/感染が一気に広がった/病床が足りない――「全方位医療」が崩れてゆく/医療崩壊を食い止める――「点」から「面」の支援へ/施設内感染による医療崩壊の危機┴第5章 危機に立つ精神医療┴菅とGoToトラベル/退けられた児玉案/疎外される人たち/各地の精神科病院で院内感染/苦渋の選択――身体拘束/「それでも必要な密」/絶たれる社会復帰への道┴第6章 ICUを確保せよ┴医療にたどりつけない/名大病院ICU――他診療科の医師を投入する/静岡県病院長会議――入院患者情報を共有する/国と医療現場で食い違う「重症」の基準┴第7章 自宅待機ゼロ墨田区の独行┴命の選別/地域完結型の実現――墨田区の「下り」搬送/検査能力が足りなければ作る――独自のPCR検査/「発熱外来」病院名の公表で年末年始を乗り切る/感染対策が人を殺す,という苦い教訓┴第8章 「死の谷」に落ちた国産ワクチン┴前代未聞の薬剤――驚異的な開発スピード/凍結された日本のmRNAワクチン開発/ワクチン開発を拒む国の消極姿勢/安全保障の一環としてのワクチン開発/国産ワクチン開発と「倫理の壁」/副反応と個人の選択┴第9章 死の淵からの帰還┴変異株と第四波/コロナの埋火/発症からコロナ治療へ/急変,エクモ装着/「もう一つの世界」/廃用症候群とのたたかい┴第10章 大阪医療砂漠┴医療から外れた一家/医療崩壊への道筋/保健所の機能不足,圧迫される軽・中等症病院/大阪市の自立性の崩壊/救命センター長らの連携┴第11章 歪みの起点屋形船から永寿へのリンクを追う┴タクシー運転手の行動履歴/拒まれた警告/屋形船協会の反発/屋形船と永寿をむすぶ線/ウイルスはどこから来たか/都知事選,そして断行された局長人事┴第12章 デルタ株との総力戦┴五輪と楽観バイアス/唐突な「入院制限」/現役世代の艱難/臨時コロナ病院――海外の事例/独自に挑む墨田区――備え連携する/状況ごとの地域療養モデル┴あとがきにかえて 敗北と「公」の支え┴新型コロナと政治をめぐる出来事
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