内容説明
伝統とプライドに根拠はあるか
「一中」と聞いてピンとこない人も、例えば東京なら日比谷、埼玉なら浦和、大阪なら北野と言えば、ある種のオーラを感じるだろう。明治以来、これらの「第一中学」は不動の地位とブランド力を誇っていた。――今はどうだろう? 相変わらず最強の浦和、復活著しい日比谷と北野に加えて、安積、桐蔭、藤島、修猷館、鶴丸と、日本各地には伝統を誇る「旧制一中」47校が割拠している。その誕生と改名の裏にある知られざるエピソードと150年にわたる歴史、県下の二中・三中・高等女学校との関係、そして最新の教育事情と進学実績までを網羅した強力な高校本。第一人者が四半世紀にわたるデータ蒐集の成果を惜しみなく注ぎ込んだ力作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoneyama
12
古い校舎が好きで、旧制一中、旧制高校のその後に興味あり。戦後の変遷と2022年現状を全国的に俯瞰できた。同窓会誌や当時の週刊誌まで丹念に引用している。一中のプライドも、戦後の極端な平等主義による一中つぶしや校名継承問題も、何かと激しい。土地によって異なる存続事情は廃仏毀釈に既視感あり。地域の数少ない優秀な生徒をどう集めるか、総合選抜制で凋落し、私立校がさらった地域を知る。東大入学者数をわかりやすい指標とするならば。最後に松本深志高校の「校則がない」話が良かった。リーダーには青春期に自治の経験が必須と思う。2022/02/05
かわくん
2
その府県で一番先に創設された旧制の公立中学校、その多くは高校として進学校になった。自分もそうした学校に入り高校生活を過ごした。明治から長く続く伝統、優秀な生徒の集積、そのような中から生まれるエリート意識。ただ、それがさまざまな制度の変化によって崩れてきたり、生徒の質的な部分が変化したりと学校によって違う。学力の平準化を狙った学校群制度が、都市部では私立志向を生み出すことにもなった。そのような歴史を具体的な学校を取り上げて過去から現在の状況までを見る。それらの学校のOBとして興味深く読んだ。2022/02/17
takao
1
ふむ2025/02/24
剛田剛
1
•我が母校も藩校起原を僭称する「旧制第一中学」を母体としているが、どうせなら修猷館くらいトンチキな校風にした方が色々面白かったのに、と残念に思う。•それは必ずしも我が母校や修猷館を揶揄する意味ではなく、エリート養成にはそういう「物語」が必ず必要になるからだ。エリート意識のないエリートはただの拝金主義にしか行く先がない。社会の分断が進む一方のこの世界において、それでも健全なエリートを生み出すためにはそういうバカバカしくトンチキで、でも魅力的な物語が必要なのだと思う。2024/12/22
日条左半次
1
受験教育にはそれなりに関心があるので興味深く読んだが、私自身は旧一校出身ではなく比較的新しい高校だったこともあり、旧一校の持つ伝統やプライドをうらやましくも思うと同時に、彼らの持つ特権意識を疎ましくも感じるところがある。当事者的感覚ではなく、あくまでも傍観者としての視点で楽しむのがいいかと思う。特に旧一校が県庁所在地に生まれなかった理由とか、基本的に男子校であった旧一校が共学になる際のドタバタなど、現在の感覚ではなかなか捉え切れないところがあって非常に興味深かった。2022/05/09