内容説明
ただひたすら植物を愛し、その採集と研究、分類に無我夢中。
莫大な借金、学界との軋轢も、なんのその。
すべては「なんとかなるろう! 」
――日本植物学の父、牧野富太郎。愛すべき天才の情熱と波乱の生涯!
「おまんの、まことの名ぁを知りたい」
明治初期の土佐・佐川の山中に、草花に話しかける少年がいた。名は牧野富太郎。
小学校中退ながらも独学で植物研究に没頭した富太郎は、「日本人の手で、日本の植物相(フロラ)を明らかにする」ことを志し、上京。
東京大学理学部植物学教室に出入りを許されて、新種の発見、研究雑誌の刊行など目覚ましい成果を上げるも、突如として大学を出入り禁止に。
私財を惜しみなく注ぎ込んで研究を継続するが、気がつけば莫大な借金に身動きが取れなくなっていた……。
貧苦にめげず、恋女房を支えに、不屈の魂で知の種(ボタニカ)を究め続けた稀代の植物学者を描く、感動の長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
301
日本の植物学の父・牧野富太郎博士を朝井まかてさんが描く。学歴がない富太郎が、アカデミズムの秩序と闘いながら研究を続けてゆく精神性の強さと、余りにも周囲への配慮に欠けた傍若無人な振る舞いとのギャップに戸惑いながら生涯を追う。莫大な借金と子沢山に奔走する妻の献身は言うまでもないが、富太郎への批判を承知で、それでも、業績を評価して支援しようとする人たちが奇跡的に登場するドラマに、そういう健全性が残っていた時代を実感する。田中芳男、森鴎外、南方熊楠、長谷川如是閑、池長孟など、意外な人物が登場するのも面白い。2022/03/12
ひさか
259
小説NON2018年11月〜2020年11月掲載のものに加筆修正を加えて2022年1月祥伝社刊。朝井さんの植物ものなので期待した。牧野富太郎のシッチャカメッチャカぶりや、助力してくれる人々の話は楽しいが、展開が冗長で疲れました。2022/05/15
ALATA
217
「わしは知りとうてたまらんがじゃ、グルグルはなにゆえ、ああも渦巻いちゅうかが」。裕福な家に生まれながらも研究に没頭し身代を潰す破天荒な植物学者、牧野富太郎。時代がそうさせたのか愛すべき天才とは言え、好きになれないなぁ。二人の妻、猶とスエの辛苦の支えがあってこそということか・・・朝ドラはだいぶ、好意的に脚色されてますね。植物にかける情熱が廻りを顧みずに家族が翻弄されるところは辛い★3※「桃を七人で食いたいが五つしかないとする。あと、いくつ要る?」岩吉の答えが秀逸。ぜひ読んでくださいませ。2024/03/28
いつでも母さん
217
ふぅ・・面白い男がいたのだなぁ。それが読後の率直な感想。どれだけの事を成し遂げても人は独りでは生きられないと私は思っている。だから、この男・牧野富太郎。日本植物学の父。『愛すべき天才の情熱と波乱の生涯』と帯にあるが、家族は堪らないよね。実家の身代を潰し、妻子を養えず・・それでも見放されないのは、そこに真っ直ぐな心と追従を許さぬ研究の熱があったからなのだろう。その業績はその後を歩む者たちの道標となった。結果オーライなのか?いや、私はやっぱりついて行かれない。老いてまだ究めたい種・・いい加減にしなはれや。2022/02/03
niisun
211
大学で造園学を学び、高知の牧野植物園に勤めたいと考えて学芸員の単位も取得した私には、なんとも感慨深い読書でした。学会との確執や大借金の話は既知でしたが、改めて物語として読むと、なかなかに壮絶です。また、江戸の庭師を描いた『ちゃんちゃら』、シーボルトに仕えた日本人を描いた『先生のお庭番』、明治神宮造営を描いた『落陽』など、植物を題材にした小説を多く書かれている朝井まかて作品ですので、植物の表現はお見事!私の手元にも祖父が昭和17年に購入した『牧野日本植物圖鑑』があり、時に圖鑑を捲りながらの楽しい読書でした。2022/09/29
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