それでも選挙に行く理由

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それでも選挙に行く理由

  • ISBN:9784560098639

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内容説明

選挙とは「紙でできた石つぶて」である。

選挙は、民主主義という統治形態において必要不可欠な制度である。しかし一般市民にとっては、選挙で選ばれた政治家や政府、さらにはそれらのもとで立案・実施される政策に失望することが日常茶飯となっている。
本書では、選挙の思想的背景、歴史的な発展経緯、世界各国での選挙政治の比較などを通じて、なぜ選挙が落胆につながるのかが明らかにされる。
政治学研究の蓄積が示すところによれば、選挙は、国民の多くが望ましいと思う政策をもたらすことはほとんどなく、経済成長や経済格差の是正にも効果がなく、また、有権者が政府を効果的にコントロールするうえでも役に立たない。
それでも選挙は、ある程度競合的に行なわれた場合、争いごとを平和裡に解決するという役割を持つがゆえに重要である。
著者のプシェヴォスキは、長年にわたり選挙および民主主義に関する実証研究を世界的に牽引してきた、比較政治学の重鎮だ。
さまざまな理想論を排除し、選挙の本質は暴力をともなう紛争や対立を回避するところにあるという本書の結論は、落胆する多くの市民を励ますに違いない。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

田氏

21
声に出して読みたい著者名はさておき、なかなかに脳味噌をこねくりまわされる内容(いやこの場合、の~みそコネコネというのがコンパイル的に正しい文法だ)。少なくとも、「社会を変え、不平等を正し、悪い政治家に鉄槌を下すために、みんな選挙に行こうぜ!」くらいの解像度で臨むと、本書は「いや、そんな単純じゃねーから」と氷水を浴びせてくるはずだ。社会倫理などよりも、力学的な視点において、選挙とはいったいどんな構造物であるのかの、集合的な理解を導く。惜しむらくは、根拠としている研究の原典、出典元の記載があまりに少ない点か。2021/12/03

うえ

4
ロシアの政治システムとシュミットの思想。●カール・シュミットは「支配者がすべての人の共通の利益のために行動する限り、どのように選ばれたかにかかわらず、人びとへの支配は維持されると主張した…民主主義の「本質」は、「支配者と被支配者、政府と統治される者、命令する者と従う者の一致」であって、選挙ではない。だがこの見方は…「ロシアの政治システムは、形式ではなくその本質において、非常に民主主義的な西洋の民主主義国と何も変わることがない」といった詭弁を認めることになる」2022/09/14

manabukimoto

4
選挙の夜に読む、選挙の本。 選挙制度が定着し始めて、たかだか200年余り。有産者でもある支配者たちは、持たざる者たちが決定権を持つことを恐れた。そして、世襲が原則の二院制や、選挙を経ない裁判官や中央銀行の総裁を自分たちの意のままに選ぶなど、あらゆる「民意を反映させない」制度を作り上げてきた。 どうやら選挙は「現職」が勝つのが世の常で、それは選挙の歴史でもある。それでもアメリカのように平和理に政権交代が起こる国もある。 翻って日本はどうだろう?長期政権の歪みに選挙は有効なのだろうか?2021/10/31

Go Extreme

3
選挙の機能:政府を選ぶということ なぜ選挙なのか 選挙の広がり 選挙によある自治という神話 政府を選択する方法としての選挙 所有権の保護 人民の声の取捨選択 超多数派制度 反多数派制度 既得権益の崩壊・揺り戻し・さらなる代替策 与党にとどまるための攻防 現職が利用できる手段 選挙の本質とは 選挙に何を期待できるのか:合理性 共通の利益 多様な選好 代表、アカウンタビリティ、政府のコントロール 事前と事後のコントロール 官僚機構のコントロール 経済パフォーマンス 経済的・社会的な平等 平和的な紛争処理2021/10/24

skr-shower

2
多数決は必ずしも正しさや正解を選ばない。選挙はどんなに得票数が競っていても、競っているからこそ投票の半数は捨てられる。反対がこれだけあるという意思表示を示せても良い方へ向かわない。しかも新興宗教組織の力で票を獲得したに至っては…読書体験としては今一つ。2022/07/26

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