内容説明
「暇」とは何か。人間はいつから「退屈」しているのだろうか。答えに辿り着けない人生の問いと対峙するとき、哲学は大きな助けとなる。著者の導きでスピノザ、ルソー、ニーチェ、ハイデッガーなど先人たちの叡智を読み解けば、知の樹海で思索する喜びを発見するだろう――現代の消費社会において気晴らしと退屈が抱える問題点を鋭く指摘したベストセラー、あとがきを加えて待望の文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ムーミン
208
最近頭の中が哲学になっていたので、哲学の面白さを感じながら読めました。諸外国と日本のものの考え方、受け止め方の違い、世界の中で日本人の良さを伸ばしていく教育のあり方、いろいろ関連して考える機会になりました。2023/01/19
tonnura007
164
暇とは何か、退屈とは何か。豊かになると人は退屈して不幸になる。しかし動物の中で退屈するのは人間だけで、退屈することこそが人間である証拠であり自由がある証拠と言える。 暇と退屈というテーマで人間の生き方を考察した本。切り口が面白く、深掘りして追求していく過程が楽しかった。あとがきにもあるように結論に飛びつくのではなく、読者も一緒に思考するような作りになっているのがよい。 個人的に疑問だったのは、退屈するのは人間だけであると結論付けるのが根拠薄弱と感じた点。暖衣飽食の動物園の動物たちは退屈しないのだろうか。2024/10/19
ふたし
163
良い本だった。「こんなことしていていいのか」と思うことは度々あるが、「それでいいのだ」と肯定してもらえた。自分も子どもたちを肯定してやらなければ。2023/01/18
trazom
162
ベストセラーに名著なしが持論だが、これはいい。暇と退屈の原理論/系譜学/経済史/疎外論/哲学/人間学を経て、最終章で倫理学に到達する。パスカル/スピノザ/ルソー/ホッブス/ヴェブレン/コジェーヴ/ハイデガー/ラッセルらによる広範な思索を援用するが、特に、ハイデガーの退屈の三形式、ユクシュキュルの環世界、コジェーヴの「人間の終わり」などを批判的に扱いつつも問題の本質に向かってゆく推進力は迫力満点。結論に十分な納得感はないが、物事の規範の根拠を明確にする「倫理学」の試みとして、とても読み応えのある一冊である。2024/06/21
KAZOO
158
題名と内容の割にはかなり読まれている本だということで、手に取ってみました。現代人(すべての人ではないと思っていますが)が暇を持て余していて、退屈さを感じているということでのその歴史的な考え方や社会的な意義を説明されています。注も懇切丁寧に書かれているのでこの種の本としては楽しめました。2024/03/31