新潮クレスト・ブックス<br> 緑の天幕

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新潮クレスト・ブックス
緑の天幕

  • ISBN:9784105901776

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内容説明

いつも文学だけが拠りどころだった――。スターリンが死んだ一九五〇年代初めに出会い、ソ連崩壊までの激動の時代を駆け抜けた三人の幼なじみを描く群像劇。近年ではノーベル文学賞候補にも目される女性作家が、名もなき人々の成長のドラマを描き、強大なシステムに飲み込まれることに抗する精神を謳いあげた新たな代表作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

110
ロシアの作家ウリツカヤの長編小説。素晴らしき学校時代から美しい時代の終わりまでの全31篇。1950年代のスターリンの死から1990年代までの旧ソ連の文化の諸事情を織り込んだ物語。文学や音楽、芸術を愛する少年たち3人を中心に言論統制に抗する幾層もの物語が積み重なって描かれている。過酷で非人間的な秩序に支配されるこの国にあって、その歴史に翻弄されながら文化を愛し生きる人びと物語である。プーシキン、ブロツキー、ナボコフ、ユーリイ・ダニエルの話も出てくる。→2023/05/25

キムチ27

74
2人のヨシフの死に挟まれた時間、70年。緑の天幕に向かって続く長い行列は其々『小さき人々』の営み・・文学・音楽を愛する天国の様な「其処」はやがてそれぞれが心を砕かれて行く時間へ変わって行った。700頁の大河小説は時系列に語られるのではなく、幼な馴染みの少年三人を軸にし、3人の少女を配し、網の目の様に繋がって行く。ロシアの大地で繰り広げられた万華鏡の世界ににも似て。個人的にミーハに重きを置かれたように感じたが。イリヤ・オーリヤの詩的魂の気高さ、音楽家としてのサーニャの才能との共鳴がいい。分厚さが嬉しくなる、2022/03/31

たま

70
3人の少年(1944年生)が級友となり良い先生に恵まれ文学芸術に目覚める。スターリン死後の時代だが、発禁の作家も多く、文学芸術を愛することは危険を伴っていた。ウリツカヤは深い敬愛をもって夥しい数の作家、芸術家に言及しつつ、少年とその家族の歩みを見事に織り上げる。原著は2000年刊行、物語もその頃(ロシアと外国の行き来が可能)明るい色調で終わる。700頁の大著だが、23の短編からなり、一つ一つは2~30頁で読みやすい。「逃亡者」という30頁の短編が独立性が高く、田舎の生活が生き生き描かれ面白い。お薦めです。2023/04/08

pohcho

68
独裁者スターリンの死に始まり、詩人ブロッキーの死に終わる大河小説。詩や小説、音楽を愛する少年3人組は文学のシェンゲリ先生に出会い輝くような学生時代を送り、その後生涯に渡って友情を育んでいく。ソ連が崩壊へと向かう激動の時代を背景に、3人に縁のある様々な人々の人生が万華鏡のように描かれるが、こんな過酷な社会状況の下でも、人は食べて飲んで語らい、誰かを愛し愛されて生きていくんだなと(田舎の村で蒸し風呂に入る老女たちの何気ない姿が印象的)悲劇的な出来事も起こるが、混沌としてどこか大らかで、人間らしさに溢れた物語。2022/01/20

ヘラジカ

64
ウリツカヤで唯一読んだことがある『ソーネチカ』と比較すると、なんと5倍ものページ数である。今年読んだ本のなかでも『リーマン・トリロジー』に次ぐ長さ。しかし、素晴らしく豊かな物語性に時間が飛ぶように過ぎる読書だった。感想をじっくり考える余裕がないので取り敢えず簡単に書いておく。時間が出来たら書き直す予定。2021/12/25

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