内容説明
埋まらない社会の分断、無関心という病、かつてない気候変動の危機。
コロナ禍で顕在化した危機にどう立ち向かえばいいのか。
時代の危機に、キリスト教はどう答えてきたのか?
教皇フランシスコ、トマス・アクィナス、アウグスティヌスから
カール・バルト、西田幾多郎まで。
未来を照らす光を過去の叡智に探る神学対談。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
110
「コロナ前から存在していた「無関心のエゴイズム」という悪質なウィルスが顕在化した」という教皇フランシスコの言葉が、ズシンと胸に響く。第一次大戦後の混乱がカール・バルトの危機神学を生み出したが、この困難な時代を救うのは、哲学か、科学か、それとも神学か…。若松さんと山本先生の対談は、神学の歴史を踏まえた深い示唆に満ちていて、多くの気付きを与えらえる。ただ、井上洋治先生の弟子として立脚点が余りにも共通しているお二人の議論が調和的すぎるのがちょっと残念。対談は、立場の違う者同士の格闘技の方が刺激的かもしれない。2022/01/30
Timothy
11
教皇フランシスコに始まり、巡り巡ってまた教皇フランシスコに終わる。「危機」はそれ自体が否定的な意味のみを持つわけではなく、「これから取る道を選択すべき分かれ目」であり、善きサマリア人の譬えで危機に面していたのは強盗に襲われた人というよりもむしろ彼のそばを通り過ぎた一人一人であるという。2019年の来日ミサに参列していたが、「教会は野戦病院であれ」というとても印象的な言葉を聞き(見)逃したか、でなければ完全に失念していた。『福音の喜び』『パンデミック後の選択』、読んでみたい。2022/03/13
joyjoy
10
自分には消化しきれない内容だったが、引用されている教皇フランシスコの言葉の数々が心に残る。とくに「善きサマリア人のたとえ」から、「…めいめいが、それを独りでするのではありません。サマリア人は、あの男の人の面倒を見てくれる宿屋の主人を求めました。わたしたちも広く呼びかけて、小さな個の集合よりも強力な「わたしたち」に巡り会うよう招かれています。…」という一節。善きサマリア人に自分を重ねることはなかなか難しい。宿屋の主人なら?あるいは、まわりに呼びかけることはできるのでは?と考えてみる。「危機」こそ「画期」。2023/02/05
九曜紋
10
若松英輔氏、山本芳久氏はともにカトリック信徒で、それぞれ大学、大学院の教授。キリスト教という宗教の解説ならまだしも、テーマは「神学」。言わんとすることの概要はつかめたが、論旨の展開は難しい。神学をわかっている者どうしが意気投合し、どんどん二人だけの世界に入っていき、読者である私が置き去りにされた印象。「危機の神学-無関心というパンデミックを超えて」というテーマはタイムリーで意義深いのに、もう少し読者フレンドリーな構成にして欲しかった。2022/01/19
どら猫さとっち
9
新型コロナウィルスというパンデミックの時代、そしていくつもの時代の危機のなかで、キリスト教はどのように答えを導くのか。社会の分断、無関心という病、気候変動のリスク…。さまざまな困難に、神学を通して乗り越える力を紐解く対談。カミュの「ペスト」では死刑を厭わない人々のどす黒い闇について書かれているが、ここでは無関心という冷たさを危惧している。内なるコロナは、不寛容と無関心で出来ているだろう。2021/12/30
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