内容説明
なぜ、スピッツはこれほどまでに愛されるのか?
ポップでマニアック、優しく恐ろしく、爽やかにエロティック。
稀代のバンドの魅力を「分裂」というキーワードで読み解く画期的論考。
【目次】
第1章 密やかさについて ─ “個人”と“社会”
第2章 コミュニケーションについて ─ “有名”と“無名”
第3章 サウンドについて ─ “とげ”と“まる”
第4章 メロディについて ─ “反復”と“変化”
第5章 国について ─ “日本”と“アメリカ”
第6章 居場所について ─ “中心”と“周縁”
第7章 性について ─ “エロス”と“ノスタルジア”
第8章 憧れについて ─ “人間”と“野生”
第9章 揺動(グルーヴ)について ─ “生”と“死”
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
44
本書はスピッツの紹介本ではなくて、スピッツを題材とした批評です。第2章には各アルバムの1曲あたりのコード数の変遷から、テマティスムの手法で彼らがどのジャンルにアイデンティティがあったのかを論じています。第4章でコード進行による必然的な喚起力を数字で示され、同じ手法で説得されます。文章中に数字が登場したら要注意です。本書のテーマは「分裂」です。各章のタイトルに分裂した二項が書いてあり、何を論じているのだっけとなったら各ページの左上のタイトルで常に確認できます。二項を示し続けることが、継起的な本というジャンル2021/12/20
内島菫
18
私は主にアンビエントを聴くとき、最初の4秒だけで自分好みのいい音かどうか判断することがよくある。そしてその性急すぎる判断は不思議に当たったりする。本書の最初の一文である「はじめに」の「スピッツの音楽は「分裂」している」を目にしたとき同様の判断が働き、その時点ですでにいい本だとほとんど確信しながら読み進めた。結論などない本も好きだが、このように結論を出し惜しみしない潔さとともに(「おわりに」を読めば出し惜しみどころか著者にとっては何度もかえってきた結論であったことがわかる)、2022/01/17
zirou1984
14
よい。自分なんて無責任に「ポップミュージックの魅力って畢竟「響きと裏切り」であってさ、みんなが聴きたいのは愛そのものじゃなくてaとiという韻律なんだよ」なんて雑語りで済ませてしまう所を、驚くほど丁寧に紐解いている。本書にあるのはスピッツへの愛と同時に音楽批評への愛であり、スピッツの魅力を意味と物語だけに還元させない語り口が素晴らしいのだ。浮気性な誠実さとでも言うべきスピッツの世界観を分析という篩にかけ、様々な切り口に浮気しながらも誠実に語るそれは音楽から社会、日常を貫いている。分裂してない人なんていないよ2022/04/30
Cibicco
11
一曲一曲聴きながらだったので、読了までかなりの時間を要しました。今まで自分が如何に薄っぺらい解釈しかしてこなかったか痛感させられる一冊です。一朝一夕で解るような、共感できるようなバンドではないから魅了されてやまないのでしょう。これから先もずっと聴き続けていくような気がします。いっときの熱病的なハマり方じゃなさそうなので2022/02/19
かんがく
10
音楽を趣味として継続的に聴くタイプではないが、一番好きな歌手となるとスピッツになると思う。歌詞や音楽性について細かい分析がされており、「分裂」と「周縁」というキーワードからスピッツが私に刺さる理由がわかった気がする。もう少し歌詞に注目して曲を聴いてみたい。2022/03/17