内容説明
一九四四年一月,アウシュヴィッツに送られた少女は,壮絶な日々の末に生きのびる.戦後,長い沈黙を経て,三〇年にわたり自らの体験を語り続けた.九〇歳を迎え,活動に幕を下ろした年に行った最後の証言を,インタビューとともに収録.そこには差別,憎悪,分断がはびこる現代への警告と,未来への一筋の希望が見える.
目次
1 〈最後の証言〉 私は生きることを選んだ┴〈コラム〉 父アルベルトさんの「つまずきの石」┴2 〈インタビュー〉 なぜ私は証言を続けたか(聞き手:中村秀明)┴3 〈ルポ〉 ロンディネ村に「平和の砦」を訪ねて(中村秀明)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
119
イタリア系ユダヤ人としてアウシュヴィッツ強制収容所に送られ、強制労働や「死の行進」から生還した著者90歳の「最後の証言」である。決して感動的なドラマ仕立てではない。「収容所で助け合いや友情はあったか」という質問にも「ない」と素っ気ない。冷酷な支配者が望むように、自分たちも人とも呼べないような卑劣なエゴイストになったのだと。美談や教訓を求める私たちを突き放す言葉にこそ真理がある。「無関心は暴力以上に暴力的」だとする彼女は、新型コロナで拡大するヘイトスピーチや中傷に対して声を上げない私たちに警告を発している。2023/01/05
ひろき@巨人の肩
86
ユダヤ系イタリア人のリリアナ・セグレ。13歳でアウシュビッツ収容所に送られ、ドイツの「死の行進」を経験。60歳から証言活動を始め、2020年に90歳で活動を終えた。「収容所では助け合いや友情はない」「堆肥をあさり死んだ馬の肉を生のまま食べた」と人間の尊厳を砕かれて尚「前に進むのよ。自分の足で一歩、また一歩」と生き抜き「私はどんなことがあっても人を殺すことはできない」と尊厳を取り戻す。「隣人愛を考える前に、憎悪を世の中からなくす」「無関心は暴力そのもの以上に暴力的であり、世の中を動かす力がある」とても深い。2023/04/04
Nobuko Hashimoto
29
ホロコーストを生き抜いたユダヤ人女性が90歳をもって講演活動を終えるにあたっての最後の証言の記録。14歳にしてひとりで生きていかざるをえなくなった体験と、そこから得た人生訓は当然ながら甘いものではない。後半は、訳者によるインタビューと、彼女が最後の講演会場に選んだ「平和の砦」という教育施設の訪問記。ロシア人とチェチェン人というように、かつて敵同士であった若者をペアで受け入れ、相互理解と和解を促し、平和構築のために何ができるかを探る場所。大変興味深い試み。もっと知りたい。薄いが重みのある一冊。2022/01/31
Cinejazz
16
ユダヤ系イタリア人のリリアン・セグレさんは、13歳でアウシュビッツ収容所での強制労働を生き抜き、ソ連軍侵攻前にドイツ国内のマルヒョ-収容所までの「死の行進」を強いられながらも生還した体験の「語り部」として、終身上院議員を務めながら人種差別問題と取り組んできた。本書は、絶望のなかで生きる道を選択したセグレさん90歳の<最後の証言>からのラスト・メッセ-ジである。「収容所で助け合いや友情はあったのか」の問いに「死の恐怖に直面すると、自らも考えつかない恐ろしい人間となり、友情などは存在しなくなる」と生々しい。2021/12/01
Mc6ρ助
15
講演者は終身上院議員、制度の違いは大きいとはいえ日本にもこういうタイトルが欲しかった。我々に反省が足りなかったとは思わないが、ものごとを曖昧なままにする大人の対応を為してその時々真摯な議論を尽くさなかったと歯噛みしたくなる(自分の意見を主張する習慣の欠如なのか、所詮は差別された側ではなかったからか?)。いままた、この国は理性的な判断が求められる時にそれが難しくなっているように思われるのは、年寄りの勘違いなのか。敵基地攻撃能力やら反撃能力やらよりは食料自給率を高める方が安全保障上効果は大きいと思うよ。2022/04/22
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