内容説明
「潜勢力」「閾」「身振り」「無為」「共同体」等に新たに「生-の-形式」を加えた10の鍵概念から深化し続ける思想家の核心に迫る
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bartleby
9
「人間とはすぐれて潜勢力の次元、なすこともなさないこともできるという次元に存在している生きものである」 アリストテレス流にいえば「非の潜勢力」(アデュナミア)。アガンベンの思考は、する/しないの境界、「閾」に立つものだ。だからいろいろと誤解も招く(Covid-19に関する発言とか)。著者によれば「人間に固有の仕事などもともと存在しない、という固い信念がアガンベンにはある」。同感。だからこそアガンベンは閾に立ち続ける。耳あたりのよい物語には傾かない(彼にとってはその1つとしてキリスト教神学がある)。2022/10/01
ヒナコ
7
アガンベンの『ホモ・サケル』があまりにも難解だったので、手頃な解説書はないかと思って読んでみた。「潜勢力」「閾」「無為」「生―の―形式」などのアガンベンの鍵概念別に、それぞれ解説されている。 アガンベンは倫理学を存在論に引き付けて考えていることや、アガンベンにとっての政治とは、「やれるけれどやらない」という、「潜勢力」をそのままにしておく「無為」にあるのだということまでは、本書の解説でよくわかった。→2022/02/04
一郎二郎
2
近代統治システムは神学の印を帯びている。父=政治と子=経済の分離。終末後に顕現する父なる神の様に、意味が未来に持ち越され空虚になる政治。過度に重視される経済。聖務の実効性から存在=義務とみなされた人間。しかし統治システムが分離・分轄した結果生み出された残余にこそ潜勢力が秘められている。メシア的使命は、残余としての過去を現在において集約し完結させる事にある。新たな倫理は生産でも行動でもなく、身振りの変容により事態を引き受ける事にある。作者が作品のなかへ生を賭ける事で成立する文学も身振りとして解析可能だ。2022/02/26