内容説明
小さなころ怖かった古典、過去の嫉妬を思い出す小説、何度も買った作家指南書、そして自身の著書について……デビューから書き続けた「本」にまつわるエッセイを一冊に。新たに5本を追加収録! 芥川賞作家である著者初の書評集。解説・島本理生。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
saga
62
作家というものは、程度の差こそあれ本書の著者のような感覚の持ち主なのか。それにしても、著者の感覚の鋭敏さは物凄い。だがしかし、本書の中の「本」を読みたいとは思えず、共読本も2冊のみ。その内の1冊『注文の多い料理店』の「文字が本の中を動き回る」という感想が驚きだ。書評の中に著者自らの幼少期や、性に関する思いが赤裸々に入り込む。これらの文章から、凡人と、作家のような超人の差が否応なく感じられた。西加奈子に関する文壇・編集者とのやり取りも読むほうが心配になる。そして、西加奈子作品の書評が1冊もない不思議。2023/07/26
サンタマリア
53
村田沙耶香さんの書評集。取り上げられている本から彼女は多様な考えを受け取っている。僕は、作品と向き合った際に受け手がどんな感想を抱くかは、受け手のこれまでの人生で掴み取った思想によるものが大きいと考えている。つまり彼女の中に宿っている思想がカラフルで面白いということなんだろうなぁ。また、彼女の抱いた感想によって小説達はより魅力的になる。クリスマスツリーにリボンを飾るように。いつか僕も小説にリボンを。最後に一つ残念な点を挙げる。取り上げられていた本達は古いものが多く地方都市には届きません。2021/12/21
おゆき
34
書評集+エッセイ。昨年「コンビニ人間」を読んで、自己嫌悪を感じたときの衝撃が忘れられない。こんなに揺さぶってきた村田沙耶香さんは、どんな本を読んでどんな考え方をしているんだろう。 彼女は浸るように、染み込ませるように、没入感ある読書をしていた。幼い頃から他人を気にする傾向にあった彼女は、読書を通して深く考え、真摯に自分と向き合い続けてきたようだ。その蓄積が今の作品世界となっている。内面が垣間見えてとても面白かったです。浸るように、そして自分を砕いてくれるような本に、私ももっともっと出会いたい。2024/05/18
桜もち 太郎
28
村田紗耶香が食べた本を試食するという感じがした。自分は一冊の本を読む時、これから一定の時間、一つの物語と向き合うことに若干の決意が必要になるが、そんな自分に導入剤的役割をしてくれるような一冊だった。印象的だったのは、村田さんが中学生だった時に自作の小説を応募しようとし、それが小説のためではなく、小説家になろうとして描こうとした、自意識の塊だったと感じたこと。「小説を汚した」と今でもトラウマになっているらしい。どこまでも小説に対して真摯な村田さん。彼女の小説が魅力的な理由がわかった気がした。エッセイも最高。2022/09/17
ちぇけら
25
本を食べることは言わば誰にでもできる。しかしそれを消化し、吸収し、栄養にするには能力が必要だ。物語は、食物のように決まった栄養素を持っているわけではない。読み手が本のなかに詰まった言葉を咀嚼し、自分にとって重要な栄養素を見つけ出す必要があるのだ。村田さんが本から吸収している栄養素は、とても儚く、美しい物語たちだった。村田さんの作る物語はそんな言葉たちの反転であり、本質的には同じ栄養素を持っているのだろうと思う。物語を生み出す行為は嘔吐に似ている。それはとても苦しく、吐き出したあとは晴れ渡るほど爽快なのだ。2022/01/29
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