文春e-book<br> アスベストス

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文春e-book
アスベストス

  • 著者名:佐伯一麦【著】
  • 価格 ¥1,800(本体¥1,637)
  • 文藝春秋(2021/12発売)
  • ポイント 16pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784163914794

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内容説明

何で自分が? 長い時間をかけて迫りくる「静かな時限爆弾」・石綿(アスベスト)によって奪われた平穏な人生。
仙台、ロンドン、東京、尼崎――自身も患者である作家が現場を歩いて綴った連作小説。

かつて建築資材などに広く使われていたアスベスト(石綿)。
その細かい繊維を肺に吸い込むことで、長い潜伏期間を経て肺がんや中皮腫を発症することから、「静かな時限爆弾」とも呼ばれる。
著者は若い頃、電気工事工として働く中、現場でアスベストを吸い込み、今なお後遺症を抱えている。
その経験をノンフィクションとして、『石の肺―僕のアスベスト履歴書』に書いたが、本書はその小説版と言える。
仙台、ロンドン、東京、尼崎とアスベストの被害に苦しむ人びとの運命を綴った連作小説集。
行政の対応が後手に廻り、結果として弱い個人が犠牲となっていく構図は、コロナ禍にも通じるものがある。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

starbro

219
仕事でアスベストに関しては少なからず縁があるので、読みました。佐伯 一麦、初読です。アスベスト関連の短編集、もっとアスベストの危険性を訴えたり、アスベストの被害者を憂いたりするのかと思いきや、著者がアスベストの被害者で、執筆に10数年をかけた結果、淡々とした内容になったのかも知れません。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163914794 1月は本書で読了です。2022/01/31

アキ

106
いずれもアスベスト(石綿)をテーマにして短篇。「せき」スーさんが40年前、10代の頃電話工事の際、空調のダクトに吹き付けられていた。「らしゃかきぐさ」日本で初めて裁判を起こした人の家にあった植物は、ロンドンのカーライル博物館で見たチーゼルであった。「あまもり」中古マンションの天井裏の修理に防護服を着て飛散防止対策をした業者から自分でリフォームを行う人の多さを聞きゾッとする。「うなぎや」尼崎で苦労してやっと一人前のうなぎ屋として店を持とうとした40代に中皮腫と診断される。すぐそばにクボタの工場が建っていた。2022/01/12

やいっち

89
題名のアスベスト(ス)に惹かれて。アスベスト(石綿)による健康被害についての訴訟・裁判などについては折々報道で伝え聞く。 「石綿被害の時効救済、27日で廃止 支援団体は制度継続訴え(2022年3月23日)|BIGLOBEニュース」によると、「アスベスト(石綿)による健康被害で亡くなった人の遺族に対する労災認定の時効救済制度が、27日で終わる。だが支援団体は「救済制度があったからこそ浮かび上がる被害の事実が多くある」と制度の継続を訴えている」とか。2022/03/22

そら

70
図書館の新刊コーナーにひっそりと置かれていたので借りてみた。発癌性物質「アスベスト」をテーマに後遺症に苦しんだ4人の物語。物質名は知っていたが、小説の中に登場する"クボタショック"や"横須賀米軍のアスベスト不法投棄"については実際の事件だと改めて知る。連作小説だが、ノンフィクションかと思わせる作品だ。2012年アスベストはようやく法改正にて使用禁止となる。見えないものに命を犯されていく健康被害ほど恐ろしいものはない。2022/01/17

けんとまん1007

68
アスベスト。久しく耳にしなかった言葉であり、忌まわしき出来事。収められている四つの掌編。それぞれの味わいがある。最後の作品まで、かなりの期間が経ったということで、それが、アスベストという言葉にまつわる期間でもあるように思う。アスベストに限らず、同じようなことを、これまで何度も繰り返してきたこの国。そこから学んだことは、一体、何だろうか?繰り返さないということであればいいのだが、敢えて、無かったことにしようとする気配も強い。忘れてはならない。2022/03/06

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