徳間文庫<br> ある日 失わずにすむもの

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徳間文庫
ある日 失わずにすむもの

  • 著者名:乙川優三郎【著】
  • 価格 ¥770(本体¥700)
  • 徳間書店(2021/12発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784198946968

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内容説明

アフガン、ミャンマー、イラク始め、今現在、世界を襲っている不幸。

そんな状況を予見したかのような作品!
ある日突然、起こりうる近未来の戦争。世界各国に生きる人々の奪われゆく日々や、愛情、未来。誰にでも起こりうる恐ろしい状況。明日には失う、いとおしい生活を、無駄のない研ぎ澄まされた美しい文体で描く。

この小説の主人公は明日の私たちかも知れません。
小説には力があると信じられる12篇!

誰が始めたともわからない近未来の戦争。昨日と同じ日が続くと思っていた日常が、ある日突然奪われる。
北米、ヨーロッパ、アジアの国々の参戦、そして日本。地球規模のパワーゲームが私たちに強いるであろう決断と残懐。
誰が始めたのか、何を争うのか、何もわからない。気付けばそこにあった戦争を、受容していく人々の姿に衝撃を受けた。
本作は、ふと日常にあらわれた戦争の暗い穴を提示する。作中の人々が穴に吸い込まれるように入っていく様子に驚きながら、自分もまたその後を追ってしまうのだろうと思った。
音が消えても心で鳴り響くブルースのごとく美しい文章。読み終えてもまだ心で鳴り続けている。
中江有里(作家・女優) 「Foresight」 2018/10/28

遠からず世界を襲うかもしれない不幸。
そのとき、人々はどのように旅立ち、何を失うことになるのか。

マーキスはNYのスラム育ち。戦争で、ようやく築いた生活とジャズミュージシャンの夢を奪われる。
フィリピンでは、17歳のマルコが銃をとり、人買いの手から娼婦の妹を守る。
グアムのホテルマンとして生活を築いてきたベンは、身重の妻に徴兵の知らせが届いたと告げる…。

ある日とつぜん踏みにじられるかけがえのない日々。夢や、幸せ、明日への希望が砕かれる理不尽な現実を描いた12篇。

「どこか涙のようにひんやりとして」
NYブロンクスで育った少年がジャズと出会う。
「万年筆と学友」
貧しい女子学生の淡い恋……。(カナダ)
「偉大なホセ」
ワイン農家のホセが蓄えたすべては……(スペイン)
「ニキータ」
ホテルマンとして築きあげてきたベンの生活が……。(グアム)
「みごとに丸い月」
中国系アメリカ人家庭。母国が敵になり…。(アメリカ)
「アペーロ」
房総に暮らす男。夢はアワビの養殖とボサノバ…。
「ミスター・パハップス」
恋人は夢想家。がんにきくという調味料を開発すると金を集め…(インド)
「足下に酒瓶」
いい波と酒があれば満足。サーファーたちの夢…。(ポルトガル)
「隔日熱病」
作家を目指して出会った出会ったのは…(パリ)
「十三分」
孤独な男が初めて知ったいとおしい世界。(アメリカ)
「こんな生活」
貧しい農家が豊かな暮らしを手に入れたが…。(中国)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ふじさん

89
各々の人生が、理不尽にも、自分以外の存在に左右されることには、葛藤や、諦めや、抵抗や、未練が付きまとう。あらゆる国を舞台に描かれているが、彼らの根底にあるのは、反戦への強い思いだ。「偉大なホセ」の最後に知る村人の彼への思いが心温まる、「ニキータ」のベンとドナの生まれる娘への思いが切ない、「アベーロ」は、日本が舞台で千紘と渚月の戦争がなければ結ばれたであろう二人の思いが分かるだけに辛い。戦争によって踏みにじられるかけがえのない日々。夢や希望が打ち砕かれる理不尽な現実を綴った短編集。思わぬ拾い物の1冊だ。 2022/08/25

西澤 隆

4
ウクライナでの戦争は単に反戦を唱えているだけでは時に蹂躙されてしまうということをあきらかにした。しかしその一方でほとんどの市井の人にとっては戦争は、昨日から明日への日々のつながりを突然ぶった切るとてつもない理不尽だということもまたまちがいのないこと。おそらく近未来の日々に訪れた世界大戦によって理不尽に変えさせられる人々の人生を語る淡々とした連作短編に、読んだ僕はあらためて「ああ、戦争はイヤだ」と実感する。ただ、その「イヤ」を避けるためにどうすればよいかを考えなければいけないのも今の時代のリアルなのだな、と2023/07/04

読書熊

4
せつない反戦小説2022/08/29

うーちゃん

2
乙川が時代小説から現代小説に転向した時は驚いたが、本作はさらに進んで近未来小説であり、反戦小説でもある。読後、第3次世界大戦後の滅びゆく世界を描いたネヴィル・シュートの「渚にて」を思い出した。とはいえ、乙川の書きっぷりは時代小説を書いたころと何ら変わらず、市井の人たちが苦難と戦い、時に敗れ、時につかのまの幸せをつかむ姿が本作でも描かれている。ただ、そのレベルは確実に深化している。掌編12作で構成されているが、私が一番グッと来たのは猫との交流を描いた「十三分」、ラストの衝撃度では「隔日熱病」だった。2022/02/03

Ooka

0
短編の割には内容が重い。文章に遊びがなくて読むのが疲れた。。。2023/08/21

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