内容説明
人類は優れた高等生物かと思いきや、
実際は700万年もの長きにわたる歴史の中で、
他の生物が有している機能を失ったりしながら現在の姿になった側面もある。
日本の人類進化学、ゲノム進化学の権威が教える、
「出来そこない」の人類進化史!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
57
体毛喪失は火や道具の使用と関係している…中立進化的には、あるとき突然変異で体毛が極端に少ない赤ちゃんが生まれたのではないか…お母さんは、その子どもを大事に育てたでしょうし、寒い場所でもたき火で温まれば体毛が薄くても生き延びる/ビタミンCを体内で生成できなくなっても、生成できたときと同じように問題なく生きて…これは、遺伝子の変化が生存の条件と無関係だったことを示しており、つまり中立進化であることのなによりの証拠/タイトル等煽り型過ぎ。はっきりした中立説の立場から表現型の進化を説明するお話でした。2022/02/01
けぴ
50
ダーウィンにより人類は進化の連続により現在の姿になったとされますが、進化というより変化である、という主旨の本。環境の変化に応じて突然変異を起こした遺伝子のうち、生存に有利な遺伝子を持つものが生き残っていくとされるが、生存に有利でない変化も、たまたま残っていくことがある。アフリカで黒色の肌は確かに生存に有利である。しかし耳垢のドライとウェットではヨーロッパ、アフリカではウェットが多く、日本ではドライが多いが、日本でドライが生存に有利とは言えない。平易な言葉でわかりやすく述べられた教養娯楽の好著。2022/06/04
大先生
14
自然淘汰説では「生存に有利な突然変異を起こした個体が子孫を残し、適さないものは淘汰される」と考える。これに対し、中立進化説では「突然変異は生物の生存競争において有利でも不利でもない中立」と考える。著者は後者の立場から【人類はできそこないとして偶然生きているだけ】だと主張しています。【人間が優れているから生き残ったというのは「勘違い」であり、実際、より優れた身体的特徴を有していたネアンデルタール人は絶滅した。チンパンジーに負けて森を出たが、たまたま生き残っただけ。そして、いずれ絶滅する】と。根暗か!(苦笑)2022/10/21
まゆまゆ
13
生物の進化について、必要なものが残り不必要なものが退化するというダーウィンの自然淘汰説とは異なる、進化の過程は偶然の連続であるという中立説を紹介していく内容。進化論における人間中心主義はキリスト教の影響が大きい。単に進化の過程を見ると、人間が生物学的に優れているから生き残ったのではなく、偶然手を使って火を起こすことができ、偶然言葉を発して意思疎通を図れるようになったから、と説く。2022/03/07
Y田
13
現在の人類は「たまたま、偶然生き残った」に過ぎないという「中立進化論」の考え方で生物の進化を解説する。ざっくり言えばシンプルで、結果的にこうなった、というだけの事だと。進化っていうとポケモンのイメージがパッと浮かぶが、本来進化とは「進歩する、良くなる」という意味ではないのも再認識出来た。変化、変態という感じか。◆「人類はいずれ絶滅する」(p210)というのもなるほどと思う。これは所謂"悲観論"とは違う。生物ってそういうものだから、というだけ。長い時間で考えると別の見方が出来るなと感じる。興味深かった。 2022/02/08