内容説明
日常においてはいつも素通りされている豊かな経験の世界がある――。“自明”であるがゆえに眼を向けられることのないこの経験の世界を現象学は精査し、われわれにとっての「現実」が成立する構造を明るみに出す。創始者フッサール以来続く哲学的営為の核心にあるものは何か。そしていまだ汲みつくせないその可能性とは。本書は粘り強い思索の手触りとともに、読者を生と世界を見つけなおす新たな思考へと誘う。
目次
序章 「確かさ」から「自明なもの」へ
「確かさ」を主張するとき、心は不安に満ちている
「自明なものの学」としての現象学
現象学という思考──「確かさ」を超える知の運動へ
共同作業としての現象学
本書の性格
第一章 「確かである」とはどういうことか?──「あたりまえ」への問い
「絶対的な確かさ」と、日常生活の確かさ
「絶対的な確かさ」は生の進行を妨げる
確かさのない世界でなぜ生きられるか──専門知の信頼性
専門知と他人への信頼
生活世界と「地平」の構造
射映と「……できる」の相関的構造
非主題的経験──確かさの豊かな土壌
「自明なもの」の知とその「不自然さ」
現象学的還元
第二章 「物」──流れのなかで構造をつかむということ
「物」とは何だろうか
神でさえ物の全面を同時に見ることはできない──「構造」としての物
形の変化
「現われていない物」も構造の一部である
「現われていない物」の広大な圏域へ
経験は「当てはずれ」に開かれている
身体の非主題的意識
見る・聞く・触ることで構造を確かめる
「現われていない物」はどのように存在するか
流動する現象の形──世界と身体の相関構造
「構成」の問題──視方の転換
「還元」は無限に豊かな相関を開く
第三章 本質──現象の横断的結びつき
本質と本質直観
前提としての「円形とは何か」
不可避的な「結びつき」──「連合」の現象
共通性と相違の際立ち
「どこにでもあってどこにもない」──本質の無限性
「媒介者」としての本質
横断的現象のハブ空港
本質の不変性──距離をゼロにする変換
空想と自由変更──現象学の野望
第四章 類型──われわれを巻き込む「形」の力
われわれはいつも類型を見ている
類似しつつ連関を形成していく諸契機
受動的に働く「類型の力」
人工物と「類型の力」──坐ることを拒否する椅子
人間という類型──類型的身体
「内面的なもの」の類型的公共性
類型的理解から来る安心と不安
ノルマリテートとアノマリテート
「狂気」という類型
類型に取り込みえない私
「世界無化」の思考実験
類型を生き抜くこと
第五章 自我──諸現象のゼロ変換
見えない自我が与えられている?
類型が機能しないとき──過去・空想・未来を駆けめぐる意識
否定的経験──自明性を手放す瞬間
自我の浮上
行為から反省へ──自由と現実
自我は切れ目に現われる
眠りと覚醒──同一の自我
諸現象のゼロ変換
「媒介」としての自我
第六章 変様──自我は生きた現在に追いつけない
自我は個であって普遍である──「変様」という現象
生きられた瞬間の現実
把持的変様──流れつつ「今」が並列される動き
変様の構造──つかみえない現在を並列してつかむ
空想可能性と、比類のない原事実
否定的経験と、自我の基本形態
反省的思考の起源
反省的思考の問題点──独我論と他我論
自我的「再構成」の手前へ──行為と他者の呼びかけ
「呼びかけ」としての現象学的言語
第七章 間主観性──振動する「間」の媒介
間主観性の問題
他者は経験のうちに現われている
反省的思考モードから行為的連関のモードへ
身体の響き合い
媒介としての対化
「変様」と原様態的経験──「原自我」という不適切な名前
転換点としての身体
媒介論的視点の重要性
媒介現象の継続的作動がすべてである
自他の「差異における合致」と「相抗う統一」
避難所としての私
終章 回顧と梗概
自明性を問うスタイル
流れそのものがとる「形」──物と本質
現象の多様な結びつきと変換構造──類型と自我
「変様」現象と自我、反省的思考の起源
振動する媒介──間主観性の解釈
諸現象の媒介的接続の分析──現象学に求められるもの
あとがき
参考文献・文献案内
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