内容説明
あなたに寄り添い、あなたを迎え入れる世界文学16選
悲しい時、苦しい時に手にした本が、まるで自分に向けて、自分のために書かれていると感じたことはないだろうか。本から聞こえてくるメッセージによって、私たちは自分が発していた心の声に初めて気づかされることがある。物語を読む行為には、そのような双方向のやりとりが存在し、私たちが本に没頭するとき、本は丸ごと私たちを受け入れ、「歓待」してくれていると著者は語る。NHKラジオテキスト『こころをよむ 歓待する文学』を大幅に加筆・修正し、新たに3章分を書き下ろした。
あなたを「歓待」してくれる、選りすぐりの作品は、ゼーバルト『移民たち』/イーユン・リー「千年の祈り」/アキール・シャルマ『ファミリー・ライフ』/小川洋子『ことり』/ハン・ガン『菜食主義者』/クッツェー『マイケル・K』/カズオ・イシグロ『浮世の画家』/多和田葉子『雪の練習生』/村上春樹『職業としての小説家』/マリー・ンディアイ『三人の逞しい女』/マリリン・ロビンソン『ハウスキーピング』/レイラ・スリマニ『ヌヌ 完璧なベビーシッター』/村田沙耶香『コンビニ人間』/瀬尾夏美『あわいゆくころ』など。
情報としての読書案内を超え、小野文学として昇華した一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(C17H26O4)
76
自分が文学から何かしらを受け取っていて、そして同時に文学に受け入れてももらっている。読んでいて度々感じること。そのことを改めて意識できたことが今とてもありがたかった。そう、そんな文学との出会いがあるから、だからわたしは読みたいんだよなあ。読んでいるんだよなあ。小野さんの人柄の伝わってくるとても素敵な本。いい本だなあ。きらっときらめくこの表紙が内容によく合っている。2022/09/26
佐島楓
74
私が比較的苦手としているはずの海外文学がメインとして紹介されているのに、どうしてこれほど惹かれるのか。それは著者が的確な読みを行い、的確な引用を行っているからに他ならない。ネタバレだといわれてしまうようなぎりぎりのラインを保ちつつ、作品の魅力をふんだんに引き出している。文学とその作者に対する敬意が伝わってくる、優れた書評集だった。2022/02/06
shikashika555
54
とてもすてきな本だった。 静かであたたかく理知的で快いものに包まれて過ごすような読書体験。 とくに8章のカズオ・イシグロと13章の『橋をかける』についてが印象深い。 自分のなかで未消化のままの靄のようなものが小野正嗣さんの言葉でするすると優しい明るさの中で形を与えられる心地良さを味わえた。 15章『コンビニ人間』についても、気づかなかった部分のおさらいをしますよ、と優しく語りかけてもらっているようで 新しい学びがありました😊 読んでいてしあわせになる本だった。2022/06/11
yyrn
27
本の紹介をこの作者のように深く掘り下げられると、それだけで一つの作品を読んだような読みごたえを感じてしまう。どうせ読むならこういう書評を読んでいきたいと思ったが、いやいや、ここまで深いと肝心の原著を読まなくてもお腹がいっぱいになりそうで、これはこれで要注意かもw。以下はいずれも読みごたえがありそうな紹介本。残念ながら私はどれも読んだことがない。▼『移民たち』WGゼーバルト(ドイツ生れ英国定住)、『千年の祈り』イーユン・リー(中国系米国人)、『ファミリー・ライフ』アキール・シャルマ(インド生れ米国定住)、⇒2021/12/15
アヴォカド
12
よかった。読んだ物もそうでない物もあるが、どちらもフムフム、なるほどーと楽しめた。どの作品もとても丁寧に開かれていく。『ヌヌ』はちょっと意外な選書だなと思ったけれど、この小説の怖さも充分なほど伝わってくるし、”歓待”の視点でなぜこれが取り上げられたかも、なるほどーと思う。2022/01/10