内容説明
堂島で紙油問屋を営んでいた上田秋成は大火によって焼け出され、幼馴染の雨月が結ぶ香具波志庵に転がりこんだ。がさつだが情に篤い秋成と、死者や妖しと交流する力を持つ雨月。二人は言葉を話す兎「遊戯」との出会いをきっかけに、不可思議な出来事の数々に巻き込まれることに――。掛け軸から飛び出す金鯉、哀しい恋物語に、罪の果てに鬼になった男まで。二人と一匹がたどり着く、優しく切ない真実とは。直木賞作家が江戸怪奇譚の傑作『雨月物語』を大胆に解釈した、切なく幻想的な連作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
54
幻想的な物語でした。『雨月物語』をモチーフにした連作短編集で、世界観がとても美しかったです。2022/09/29
shincha
49
妖力を持ち、人には見えないものが見え、感じられない事を感じられる雨月と幼馴染で大火で焼き出され雨月の元に居候する秋成、そこにウサギの妖怪、遊戯が加わり物語は進んで行く。途中から何となく雨月の存在は、何か違う…と布石を打たれるが…どういう展開になっていくのかは全く想像できない。ん?上田秋成?なんか聞いた事あるぞ、ん雨月?これもなんか聞いた事がある…。そっか、そういう事か。歴史に疎い小生は最後にやっと西條奈加さんの書きたかった事がわかった。きっと文学に詳しい人は最初からわかっていたのだろう。面白かった。2023/05/24
はつばあば
46
何と懐かしい(^^♪。読み始めた時は雨月と秋成??に惑わされた。だって小学生で読んだ本ですもの、9編のうち忘れていた内容といつまでも頭の片隅に残った恐ろしさが、西條さんの柔らかい文章で再登場の雨月物語。子供の頃はオバケが怖かったけれど本当に恐ろしいのは人、それを教えてくれたのは上田秋成。昨日読んだ「すみれ荘ファミリア」もそうですが、世間のいう「良い女」なんてクソ喰らえ。亭主が浮気しても悋気せず耐えろって?。渋OO一が大嫌いなのもクソみたいな男だから。甲斐性の有無ではない、一夫一婦で添い遂げられない男が↓2021/11/21
MATSU
41
初読みの作家さんです。雨月物語をベースにしたお話。雨月と秋成と兎の遊戯の短編集のようなお話で、少し不思議だったり、人間の業のちょっとうすら寒い話だったりと。雨月の正体はどうなのかと思っていましたが、そうくるとは。びっくりしました。雨月物語を読んだ事がないのですが、雨月物語も怪異小説との事なのでそちらとの共通しているのかなと。こういう話は好きなので雨月物語も読んでみたいですね。この作家さんの違う話も読んでみたいです。2023/01/06
ひさか
41
小説BOC創刊号(2016年春号)〜9(2018年春号)掲載の9つの連作短編を2018年11月中央公論新社から刊行。2021年11月中公文庫化。雨月物語の作者上田秋成を主人公にしたファンタジー。紅蓮白峯、菊女の約、浅時が宿、夢応の金鯉、修羅の時、磯良の来訪、邪性の隠、紺頭巾、幸福論、の9編。面白そうな設定と雰囲気で、最初から提示される謎もあり、わくわくするが、展開に工夫がなく、楽しめなかった。2022/02/26