内容説明
堂島で紙油問屋を営んでいた上田秋成は大火によって焼け出され、幼馴染の雨月が結ぶ香具波志庵に転がりこんだ。がさつだが情に篤い秋成と、死者や妖しと交流する力を持つ雨月。二人は言葉を話す兎「遊戯」との出会いをきっかけに、不可思議な出来事の数々に巻き込まれることに――。掛け軸から飛び出す金鯉、哀しい恋物語に、罪の果てに鬼になった男まで。二人と一匹がたどり着く、優しく切ない真実とは。直木賞作家が江戸怪奇譚の傑作『雨月物語』を大胆に解釈した、切なく幻想的な連作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
89
秋成と雨月と兎の遊戯が遭遇する事件を江戸怪奇譚「雨月物語」をモチーフに綴った切なく幻想的な短編集。鈍感だが情に篤い秋成、死者や妖し交流する力を持つ雨月、人間の言葉を話す兎・遊戯の出会いをきっかけに、様々な変事に巻き込まれる。祖父の妄執から幼子を守るために主人を殺す女、掛け軸から飛び出す夢応の金鯉を手に入れようとした男、いつまでも歳をとらない美女、犯した罪の果てに鬼となった男等。どの話にも共通するのは、雨月が口にした「生きる者の業にくらべれば、死者なぞ可愛いものさ」が基調にある。今までとは、一味違う作品。 2024/07/16
annzuhime
57
雨月物語を元にしたお話。大好物の幻想奇譚だけど読了に時間がかかったのは私の精神コンディションのせい。お話はどれもほんのり切なくて、遊戯が可愛くて良い雰囲気でした。雨月はきっとあれなんだろうなと思いながら読んでいたけど、真相を知ってビックリ。どちらにしても切ないね。静かな文章の中に優しさと恐怖が見え隠れして好きです。2023/12/04
優希
56
幻想的な物語でした。『雨月物語』をモチーフにした連作短編集で、世界観がとても美しかったです。2022/09/29
shincha
52
妖力を持ち、人には見えないものが見え、感じられない事を感じられる雨月と幼馴染で大火で焼き出され雨月の元に居候する秋成、そこにウサギの妖怪、遊戯が加わり物語は進んで行く。途中から何となく雨月の存在は、何か違う…と布石を打たれるが…どういう展開になっていくのかは全く想像できない。ん?上田秋成?なんか聞いた事あるぞ、ん雨月?これもなんか聞いた事がある…。そっか、そういう事か。歴史に疎い小生は最後にやっと西條奈加さんの書きたかった事がわかった。きっと文学に詳しい人は最初からわかっていたのだろう。面白かった。2023/05/24
はつばあば
46
何と懐かしい(^^♪。読み始めた時は雨月と秋成??に惑わされた。だって小学生で読んだ本ですもの、9編のうち忘れていた内容といつまでも頭の片隅に残った恐ろしさが、西條さんの柔らかい文章で再登場の雨月物語。子供の頃はオバケが怖かったけれど本当に恐ろしいのは人、それを教えてくれたのは上田秋成。昨日読んだ「すみれ荘ファミリア」もそうですが、世間のいう「良い女」なんてクソ喰らえ。亭主が浮気しても悋気せず耐えろって?。渋OO一が大嫌いなのもクソみたいな男だから。甲斐性の有無ではない、一夫一婦で添い遂げられない男が↓2021/11/21