内容説明
「対話の方法」としてのソクラティク・ダイアローグを紹介するとともに、「対話」と「哲学」に関する考察を展開する。一つのテーマをめぐって丁寧かつ濃密な「対話」を行うワークショップであるソクラティク・ダイアローグは、ヨーロッパで哲学教育や市民対話、企業研修などのツールとして用いられている。大阪大学臨床哲学研究室が初めて日本に紹介・導入し、哲学カフェや子どもの哲学の実践とともに展開してきた軌跡と論考。
目次
第1章 出会い
第2章 対話の仕掛け
第3章 二つの事例
第4章 歴史と今日の展開
第5章 SDをどう活用するか
第6章 対話と哲学
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kuro
0
私たちの対話について、どのような部分を固定してどのような部分を自由にするのか、これまでの対話とその固定する位置が異なるような実践なのかなと感じた。2024/01/24
淡野 直人
0
哲学実践の試みの一つである「ソクラティック・ダイアローグ」の解説書。 小集団の対話を統制する方法論として非常に示唆に富むだけでなく、ルーマンの社会システム理論を参照して、哲学的な対話をオートポイエーシス・コミュニケーション・システムとして設計し、「哲学すること」を自己産出するように導くという発想には色々と考えさせられるものがあった。2020/08/23
鵜殿篤
0
事前に予想していたのは、ソクラテス対話篇のテキストに即して対話の技法を抽出し、実践を再構成するんだろうなという程度だったけど。実際は、対話の論理を具体的かつ実践的に考え抜いた上で、試行錯誤の過程を経て鍛え上げられてきた技術の集成だった。そして現在の技術水準は、本書の報告を見る限り、ソクラテスが実践した哲学的問答法の核心にそうとう近づいているように思う。実践の裏付けが着実に積み重ねられてきていることも、説得力を強烈に担保している。自分も真似してみようかな、などと思ってしまった。2018/09/17
良さん
0
SNSやツィッターの軽佻浮薄なやりとりの対極にあるのが、ソクラティク・ダイアローグによる実のある対話だろう。人間のコミュニケーションは、やはり一つ一つのことばを大切にするやりとりでありたい。 【心に残った言葉】教師は何も教えない。答えはもちろん、どのような哲学的問題があるのかも教えない。ただ生徒たちに「問い」を発するよう求めるだけである。(129頁)2018/07/01