内容説明
「19世紀半ばに普遍的なものの規範が崩壊し、作家はどんな言葉を選びとるのか自らに問いかけないと文学を構築できない中で、フローベールは最初にそのことを自覚し、執筆していった」と著者は言う。作家の精神的現れである形式(フォルム)を読み取ることが構造を読み解くことという立場を守り、残された草稿類を参照しながら、20世紀文学の先駆者としてのフローベール作品の構造分析と肖像を探る。
目次
第1部(『ボヴァリー夫人』における鏡像
『サラムボー』における時間
『感情教育』における空間と主語
『聖アントワーヌの誘惑』における空間
『三つの物語』の構造と意味)
第2部(ルーアン大聖堂
蛇崇拝
アポロニウス
アドニス
イエス・キリストの死とその復活
エピローグ―糞あるいは堆肥)