内容説明
ベトナム戦争とは何なのか? 最前線がどこにもない、いや、全土が最前線と化している。そんな“戦場”をカメラマン秋元と取材した100日間の記録(1964~65)。生と死、日常と非日常が入り交じる混沌を描く濃密な言葉。時を超えて読み継がれる傑作ルポルタージュ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イプシロン
35
この本の感想は人それぞれであろう。それでいいと思う。しかし、日野啓三の解説にあることだけは押さえておくべきだろう。曰く「“事実”というものは、どうしようもなくあいまいであり、どんな顔でも見せる。ルポルタージュあるいは報道記事というものは、事実を客観的に伝えることである、という安定した大状況下での定義は成り立ち難い」ゆえに「明確な構図のない大状況の混沌の中で、事実らしきものを追い、最小の筋道でも読みとり浮かびあがらせたい、とする報道者としての誠実さが、言葉の、文章の全性能を不可避的に呼び出すのである」と。2022/10/02
本の蟲
12
作者代表作『輝ける闇』は以前に読んだが、こちらはその元となったベトナム戦争従軍取材のルポルタージュ。テロ・デモ・デマ・ク―(クーデター)が特産品と言わしめたサイゴンの混乱。ベトナム人自身もわからないとこぼすベトナム人の複雑な心境。敵を増やしているだけと自覚している米軍兵士の徒労感。戦地取材は危険が付き物と頭ではわかってはいたが、ジャングルで敵に囲まれ、四方八方から銃撃され、次々と周囲の兵が倒れていく緊張感と恐怖たるや。よく生還できたものだと驚愕。豊富な写真付きで語られる生々しいベトナム戦争の一端2025/04/10
Hatann
8
1964年のトンキン湾事件以降、アメリカは南ベトナムの内乱に直接介入を始める。同年11月から約100日間に南ベトナムのあちこちを歴訪し、泥沼に向かうベトナム戦争の状況を予言したルポルタージュ。ニョクマムの匂いのしみついたベトナムは、農作物に恵まれているものの、圧倒的な貧困層を抱えており、見えない搾取の構造を感じさせる。爆撃や虐殺は、人々を政府ではなくベトコン支持へと走らせた。米国兵との対話に加え、旧来の知識人層である仏教僧との筆談などを通じ、総力戦の悲惨さに肉薄する。豊富な語彙と鮮烈な写真にくらくらする。2023/03/13
勝浩1958
8
よくぞ行った!よくぞ書いた!あなたは凄すぎる。サントリーオールドのCMが思い出される。2022/11/11
どら猫さとっち
8
開高健は、64年11月から翌年の2月の100日間、戦火のベトナムに行き、そこでの体験を綴った。それが本書である。そして、そこから生まれた名作が「輝ける闇」だ。リアルに生々しく、読んでいくうちに、リアルな戦火がページから湧き上がり、逃れられない戦争の苦しさ、残酷な生活が浮かび上がる。地べたに座り込み、茫然としている開高の姿が、今も忘れられない。そして、本書で綴った戦争の生々しさは、読んだ後も心の奥底に残っている。2021/12/25
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