〈ハイブリッドな親子〉の社会学 - 血縁・家族へのこだわりを解きほぐす

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〈ハイブリッドな親子〉の社会学 - 血縁・家族へのこだわりを解きほぐす

  • 著者名:野辺陽子/松木洋人
  • 価格 ¥2,200(本体¥2,000)
  • 青弓社(2021/11発売)
  • ポイント 20pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784787234070

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内容説明

映画『そして父になる』が描いたように、私たちは血縁の有無や「こうあるべき」という規範によって「家族」を自明視し、それに強くこだわりもしている。憲法24条の改正をめぐる議論もこの延長線上にあるといえるだろう。

だが、生みの親と育ての親が異なったり、「他人」同士が生活をともにしたりと、親子関係の実態は多様であり、「育児の社会化」も近年盛んに議論されている。

代理出産、特別養子制度、里親、児童養護施設といった事例から、多様化し複雑化する昨今の〈親子〉事情を丁寧に腑分けして紹介し、それぞれの現状と問題点を指摘する。血縁や実親子だけを軸に家族を考えていくことの弊害を明らかにして、ハイブリッドな親子関係がもつ可能性を描き出す。

目次

はじめに 野辺陽子/松木洋人

序章 「育児の社会化」を再構想する――実子主義と「ハイブリッドな親子関係」 松木洋人
 1 文化としての実子主義/歴史のなかの実子主義
 2 「育児の社会化」を再構想する――実子主義×家族主義の四象限
 3 三つのオプションのなかの実子主義と家族主義
 4 何が「育児の社会化」を阻むのか

第1章 代理出産における親子・血縁 日比野由利
 1 代理出産の歴史――体外受精を用いた代理出産の登場と母子関係の変化
 2 商業的代理出産と生殖ツーリズム
 3 依頼者のための妊娠・出産
 4 他人の受精卵
 5 生物学的なつながりの優位
 6 エージェントの介入と依頼者による解除
 7 棄てられる子ども
 8 依頼女性――自分の卵子と第三者の卵子
 9 ゲイカップルの依頼者

第2章 特別養子制度の立法過程からみる親子観――「実親子」と「血縁」をめぐるポリティクス 野辺陽子
 1 特別養子制度の親子観
 2 特別養子制度の立法の経緯と背景
 3 立法の論点:1――養親子の表象:戸籍の記載をめぐる議論
 4 立法の論点:2――実親子の法律関係をめぐる議論
 5 「実親子」と「血縁」をめぐるポリティクス

第3章 「家族」のリスクと里親養育――「普通の家庭」というフィクション 和泉広恵
 1 里親制度の変遷
 2 被支援者としての「里親」の構築
 3 「家族」からみる里親制度
 4 「親」の役割と子どもの利益

第4章 「施設養護」での育児規範の「理想形の上昇」――一九六〇年代後半から七〇年代前半を中心に 土屋 敦
 1 「新しい児童問題」の形成
 2 戦後における乳児院と児童養護施設の増加
 3 「施設養護」の子どもたちの出自
 4 「実子家族」への児童福祉の関心の薄さ
 5 「ホスピタリズム(施設病)」問題の形成
 6 一九六〇年代後半から七〇年代前半の「新しい児童問題」の興隆
 7 「育児の社会化」の四象限のなかの「施設養護」の現在的展開

終章 〈ハイブリッド〉性からみる「ハイブリッドな親子」のゆくえ――融合・反転・競合 野辺陽子
 1 融合――「親子」の要素の分節/接合と解釈の政治
 2 反転
 3 競合――親子の序列化

あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヒデミン@もも

41
思ってた以上に真面目な内容。『そして父になる』を用いての説明がわかりやすい。2016/12/21

きいち

22
代理出産/特別養子制度/里親/施設擁護それぞれについてのレポートと、松木・自身も養子縁組家族という野辺による「育児の社会化」をめぐる総括からなる(学会大会での発表をもとに書籍化)。「生みの親=育ての親」である自分には実感値をもって考えにくいのでありがたい。『そして父になる』で血縁で子どもが交換された時の違和感を説明してくれ、さらに、生みの親・育ての親を排他的に選ばない新たな結末を提示する松木に感覚的に賛同。血縁主義も家族主義も近代の産物と相対化する考え方は、普通の家族からも肩の力を抜いてくれるものだから。2016/12/11

さんた

3
使ってる単語が難しいので「何言ってんだこれ?」と考え考え読み進む。「コレコレはこうあるべき!」みたいなはっきりした主張があるわけじゃないから、逆に言いたいことがわかりづらかった。私、その道の専門家じゃないし。まぁ、学会のテーマセッションを基に加筆・修正して出された本なので、そもそも一般読者向けではないのだろう。難しかったけど、興味深いテーマだったし、色々考えさせられた。時間をおいて読み直したいと思うけど、もう絶版みたいだし、近所の図書館にもないし、手に取るまでに時間かかるのがネックかな。2020/02/01

vonnel_g

2
代理出産や養子縁組、児童養護施設などの特徴や問題点を通じて子どもが育つ環境としての家族を考察する。不妊治療で苦しんでいる人を見ると「それ養子じゃいかんのかい」と思ってきたのだけれど、そこには実子主義や家族の「あるべき姿」の強固な思い込みが深い闇となって横たわっている。みんなそこから抜け出せればもっと幸せな「家族」が増えるのだけれど。ところで代理出産の章に「若い日本人の富豪が多量の代理母に自分の子供を産ませようとした」という事件に言及していたけれど、あれどうなったんでしょうね。2017/01/14

いとう

1
みんなが家族に縛られる。夫婦も、支援者も、行政・国も。 そのような状態で『家族を越える』というスローガンを達成しようとしても、実の無い表面的な解放になってしまう。 家族を「越える」のではなく、様々な『家族の在り方』をハイブリッドした『ハイブリッドな親子』とは何かを、性、生殖、愛情、養育、同居などのコンテンツで考える。2021/12/06

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