講談社文庫<br> もう生まれたくない

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講談社文庫
もう生まれたくない

  • 著者名:長嶋有【著】
  • 価格 ¥715(本体¥650)
  • 講談社(2021/11発売)
  • ポイント 6pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065250563

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内容説明

マンモス大学の診療室に勤める春菜、シングルマザーの美里、二人の謎めいた友人の神子。震災の年の夏、「偶然の訃報」でつながった彼女たちの運命が動き始める――。
新聞に載る死。テレビで騒がれる死。どこかでひっそり終わった死。有名人の死。身近な人の死。名も知らぬ遠い国の誰かの死。
そのどれもが身近で、私たちの人生と隣り合わせにある。死を描くことで今を生きることの意味を見出す、著者新境地。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

のんちゃん

37
春菜、美里、神子は同じ大学で働く友達。ある有名人の訃報を知った時からの、各々の日常と彼女達と薄く関わる人々の日常を死というものを中心に描いた作品。いつも思うが芥川賞作家さんの作品の感想は難しい。大きな出来事もなく淡々と人々の心象風景が語られて行くからだろうと思う。が、解説の西加奈子氏の言葉にもある様に「気にも留めないこと、気には留まったけれど覚えておく必要のないこと」を描いたこの作品は、ある意味、興味深く面白かった。死ぬという事象を心の裏から観る様な作品だ。うーん、これで伝わりますかね😅2022/05/24

ちぇけら

25
人はいつか死ぬ。生きているから死ぬのだ。死んでしまえばもう死なない。ぼくらは生をとおして死を「選ばされて」いるから。そして奇しくも、誰かの死によって歪な距離感で他人と「繋が」れる。生きることは、同意を示されても「わかって」もらえた気になれず、タクシーの運転手に「丁寧に」接するような日々の連続だ。それは「正しい」が「心地よくはない」。誰かが死ぬと、不適切に笑いながらも、その人について語り、悼む場が生まれる。他人の死は「正しく」悼めないけれど、そこに生じるゆるやかな「連帯」の日々は、生きているみたいに温かい。2022/06/18

NAOAMI

19
職場から繋がる人々が時折触れるゴシップ、他人の死。死に纏わる事情を思ったり、報に接した自身の反応に考えをめぐらせたり。A大学で働く3人の女性、その配偶者や友人、非常勤講師の周辺、それぞれの視点が淡々と続き、時々交差したり表裏の感情を知れたりという話。全体的に退屈な内容なのに、実名人物の死や出来事がエピソードの都度絡ませられ、同じ訃報に対する別々の反応を俯瞰していくのが妙に可笑しく引き込まれる。所々に配されるアクシデントが効果的なアクセントになりハッとさせられる。客観死を通じて命の存在感に繋がったか?疑問。2022/02/20

アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯

12
ゴシップ、有名人の訃報、身近な人の死。同じ訃報(有名人の)を聞いた人、それぞれ思うこと。悼んでないようで悼んでいたり。何気に長嶋有さんの作品には“死”が出てくるのよね。2022/11/24

qoop

11
東日本大震災を経験し、これまでにないほど死との距離が近づいた日常を送る市井の人々。著者の筆は多様な形で死と隣り合わせに生きる平凡さを写し取る。偶然か必然か、選択肢があったかなかったか。二極の間で揺れながらも呆気なく決まる契機を淡々と、同時に戸惑いを持って描き出す。間近にある/不意に襲ってくると分かっていながら油断する彼らの姿は、死を意識しながら暮らすことの本質的な難しさを浮き彫りにしている。それだけ日常の壁は厚いのか。日常を描くということの意義めいたものを説かれているかのようにも思えた。2022/02/20

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