文春文庫<br> 知性は死なない 平成の鬱をこえて 増補版

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文春文庫
知性は死なない 平成の鬱をこえて 増補版

  • 著者名:與那覇潤【著】
  • 価格 ¥950(本体¥864)
  • 文藝春秋(2021/11発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784167917869

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内容説明

「うつ」でも大丈夫だよ。
――どんなに「できること」を失っても、必ずまた一緒にやっていける。
研究者として最盛期を迎えていた30代の半ばに、重度の「うつ」で言葉の読み書きができなくなっていた著者は、いかにして知性を取り戻し、しかし大学を去ると決めたのか。能力主義の限界を超える、新しい社会の見取り図はどこにあるのか。平成の「反知性主義」を検証し、疫病の令和で孤立する人を励ます真摯な一冊。解説・東畑開人●文庫大増補版●

目 次
Prelude――「うつ」の世紀に生きるあなたへ
はじめに 黄昏がおわるとき
第1章 わたしが病気になるまで
 「知識」を仕事にするまで/大学教員としてみたもの
第2章 「うつ」に関する10の誤解
 誤解1 うつは「こころの風邪」である
 誤解2 うつ病は「意欲がなくなる」病気である
 誤解3 「うつ状態」は軽いうつ病である
 誤解4 うつの人には「リラックス」をすすめる
 誤解5 うつ病は「過労やストレス」が原因である
 誤解6 うつ病に「なりやすい性格」がある
 誤解7 若い人に「新型うつ病」が増えている
 誤解8 うつ病は「遺伝する病気」である
 誤解9 「カウンセリング」が重いうつに効く
 誤解10 うつ病は「認知療法」でなおる
第3章 躁うつ病とはどんな病気か
私が病気に気づくまで/精神病理学と出会う/知識人は人間をどうみてきたか/躁という言語、うつという身体
Interlude――大学で いちばん大切なこと
第4章 反知性主義とのつきあいかた
知性主義という例外/ベストセラーにみる大学の黄昏/「知性主義」の落城と再生
第5章 知性が崩れゆく世界で
帝国が消えてゆく世界秩序/地域の命運を決める「帝国適性」の高低/あらたな「身体の政治」をもとめて
第6章 病気からみつけた生きかた
入院とデイケアの体験から/「能力主義」が見落としたもの/あたらしい時代を生きる
おわりに 知性とは旅のしかた

Coda1 知性の敗北あるいは「第二のルネサンス」
Coda2 大学のなかでこれ以上続いてはならないこと
Coda3 リワークと私─ブックトークがあった日々
解説 東畑開人 ゲームマスターと元歴史学者―そのワイルドな知性

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Shun

39
與那覇氏は現在評論家という肩書で執筆活動を行っている日本の知性であるが、以前は大学で教鞭をとる歴史学者でした。在職中に鬱を発症し離職、そして読み書き能力の低下を経験する。本書は幸いにも寛解し再び執筆を行うようになれた著者の記録となります。序盤に様々な誤解がされている鬱についての解説が入り、よく知らなかったことも多かったです。本書を記した人物が読むのも苦労する程の状態に陥ったにも関わらず、再び知性を示せるようになったことに希望が見えます。復帰後は大学に戻らず、”元”歴史学者と表現しているのはユーモアですね。2022/03/21

そふぃあ

27
重度のうつ病に陥り読み書きの能力を一度失った社会学者が、どのように再び執筆活動ができるまでに寛解したのか。というあらすじが気になり本書を手に取った。うつ病にまつわる話よりもデカルトやデリダや政治の話の方が面白く感じたのは、病による能力低下があったとしても著者の知性に消えない光があったからだと思う。Twitterを例にした「エリクチュール」の説明がわかりやすかった。人間は言語抜きには成り立たないのに、言葉を通して自己が多様なイメージに引き裂かれて、結局本当に伝えたいことは他者に伝わらないのがもどかしい。2022/01/08

踊る猫

23
著者も広く括れば「ロスジェネ」に入るのだろうか。私も同世代なので、それまで信じていた教科書の知識がドラスティックに崩れる様を原風景として見ていることに共感を抱く。想定外だったのは身体性と言語性を分け、前者が復権しつつあることをシャープに整理していること。なるほど説得力がある。そして、著者は身体性の反動的な復権にも言語性のエリーティズムにも与せず第三の道を示そうとしている。それはコミュニズムと資本主義を巧く折衷した方向性だ。これ、中島岳志の「リベラル保守」と似ているのではないだろうか(というか、一緒かも?)2021/11/25

軍縮地球市民shinshin

22
元の単行本は持っているが、文庫では5つの文章が増補されているというので買ってみた。特に最後の「リワークと私 ブックトークがあった日々」が一番面白かった。鬱病で本が読めなくなるというのは正直わからなかったが、文字が文章として認識できなくなるということを初めて知った。まさに著者がそんな状態から回復していく過程を知ることができた。最初は文章を書き写すことから始まり、本の感想を他人に伝えるブックトークになり、最終的には本の要約を書く、というプロセスを踏むらしい。最近著者はネット論壇でまた活発に発言をしている。2021/12/06

テツ

19
歴史学者として世に出た著者はうつを患い、読み書きを含めた諸々が何もできなくなった。そんな状態からの緩やかな一進一退の回復と、それと照らし合わせるように社会についてのあれこれを哲学や政治と絡めながら語っている。知性は尊いものだし、それを尊べ(尊ば)なくなった人間は決して美しい存在ではないよなあ。左右問わず政治活動がアイデンティティと密接に関わっている方々に対して個人的に感じる嫌悪感である「一貫性のなさ」や「どの口で言ってんの」みたいな部分についても再度考えることができた。良書。2023/07/26

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