内容説明
冒頭に置かれた「死の国の世代へ」は「闘争開始宣言」という副題を持つ詩である。そこでは誰の保護も受けずに生きた個人のイメージが描かれる。
60年安保闘争での敗北を経て書かれた「擬制の終焉」では社会党や共産党などの党派的な左翼運動や市民・民主主義的な啓蒙主義を完全に否定し、真の前衛運動ないし市民運動の成長に期待を寄せた。
1969年、東大安田講堂に籠もった学生が警察力によって排除された直後に書かれた「収拾の論理」において、丸山真男に代表される大学の知識人の欺瞞を批判し、徹底的に論争を続ける旨宣言して結ばれる。
日本がバブル景気で沸き立っていた1988年に書かれた「七〇年代のアメリカまで」では、その後の東西冷戦終結でアメリカ合衆国が唯一の超大国となる……というあまりに単純化された物言いとまったく異なるアメリカへの視線が浮かび上がっている。
本書に収録された13篇がモチーフとするのは60年安保闘争や全共闘運動といった過去の出来事だが、むしろ執筆当時の文脈から切り離されて現代において読まれてこそ、個人と権力の関係をより切実に感ずることができ、その真価を発揮するものと思われる。
目次
死の国の世代へ
憂国の文学者たちに
戦後世代の政治思想
擬制の終焉
現代学生論
反安保の悪煽動について
思想的弁護論
収拾の論理
思想の基準をめぐって
「SECT6」について
権力について
七〇年代のアメリカまで
革命と戦争について
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
yoyogi kazuo
1
有名な「わが国では思想の根底が問われるときは、体制的か反体制的かが問題なのではない。思想がその原則を現実の場面で貫徹できるだけの肉体をもっているかどうかが問題なのだ」というフレーズが「収拾の論理」という東大全共闘についての文章に出てくるのだというのを知った。安保闘争を総括した「擬制の終焉」という有名な文章も収録。2022/03/16
Go Extreme
1
憂国の文学者たちに 60年安保・全共闘論集 死の国の世代へー闘争開始宣言 憂国の文学者たちに 戦後世代の政治思想 擬制の終焉 現代学生論―精神の闇屋の特権を 反安保の悪煽動について 思想的弁護論―6.15事件の公判について 収拾の論理 思想の基準をめぐってーいくつかの本質的な問題 「SECT6」について 権力についてーある孤独な反綱領 七〇年代のアメリカまでーさまよう不可視の「ビアフラ共和国」 革命と戦争について 2022/01/15
十文字
0
吉本がもっともとんがってた頃の、もっともとんがった論集。2023/02/07




