自己啓発の時代 - 「自己」の文化社会学的探究

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自己啓発の時代 - 「自己」の文化社会学的探究

  • 著者名:牧野智和
  • 価格 ¥3,190(本体¥2,900)
  • 勁草書房(2021/11発売)
  • ポイント 29pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784326653720

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内容説明

自己啓発書にはその時代ごとの価値観・社会意識が凝縮されている。自己啓発書ベストセラー、就職対策書、女性誌、ビジネス誌の分析から、いつのまにか自分探し・自分磨きへと誘われてしまう現代社会のメカニズムを明らかにする。なぜ自己啓発書が売れているのか、なぜ「◯◯力」が次々と登場するのか、複眼的に考えたい人のために。

目次

はじめに

第一章 「自己」の文化社会学に向けて
 1 「自己をめぐる問い」と社会
 2 「自己をめぐる問い」への文化社会学的アプローチ
 3 「自己の体制」
 4 後期近代と「自己の再帰的プロジェクト」
 5 「自己のテクノロジー」
 6 自己啓発メディアという「自己のテクノロジー」
 7 本書の社会学的意義
 8 分析のスタンス

第二章 自己啓発書ベストセラーの戦後史―戦後日本における「自己のテクノロジー」の系譜
 1 自己啓発書ベストセラーについて
 2 哲学的思索、記憶術、「心がまえ」と精神論―戦後から一九六〇年代まで
 3 失われた「心」の模索―一九七〇年代から一九九〇年代前半
 4 自己啓発書ベストセラーの分岐点―一九九五年から二〇〇二年
 5 超越的法則論の増殖、仕事術・脳科学ブーム、自己啓発の一般化―二〇〇三年以降
 6 「自己の体制」をめぐる検討課題の提出

第三章 「就職用自己分析マニュアル」が求める自己とその社会的機能
 1 大学生の就職活動における「自己分析」について
 2 「就職用自己分析マニュアル」について
 3 自己分析の定着と目的論の濃密化
 4 過去・現在・未来から「本当の自分」を導出する
 5 自己を客観的に見直し、「輝き」を演出する
 6 自己分析の終着点
 7 自己分析が求める自己とその社会的機能

第四章 女性のライフスタイル言説と自己―ライフスタイル誌『an・an』の分析から
 1 女性向け自己啓発メディアへの接近
 2 ライフスタイル誌『an・an』の特性と資料選定・分析の視点
 3 一九八〇年代以前―変えられる外見、変えられない内面
 4 一九九〇年代前半―心理テストが構築する「本当の自分」
 5 一九九〇年代後半―内面の技術対象化
 6 二〇〇〇年代―あらゆる手段を用いて「私」に取り組む
 7 自己を語る権能の所在―生き方関連特集における記事登場者の分析
 8 自己啓発的言説の社会的機能に関する中間的考察

第五章 ビジネス誌が啓発する能力と自己―ビジネス能力特集の分析から
 1 「力」の増殖とそれを捉える視点
 2 ビジネス誌において啓発される「力」
 3 ビジネス誌において啓発される「自己の自己との関係」
 4 「力」をめぐる権能の偏在・流動
 5 今日的通俗道徳のダイナミズム

終章 自己啓発メディアが創り出す「自己の体制」
 1 内面の技術対象化
 2 自己啓発メディアの社会的機能
 3 自己をめぐる権能について
 4 自己啓発メディアが創り出す「自己の体制」
 5 本書の「効用」

あとがき
文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

テツ

20
いわゆる自己啓発本もそれをありがたがる方々も好きではないけれど、何故そうしたものがある程度持て囃されるようになったのかということを社会学的な視点から解説してくれるこちらは面白かった。自己というモノが自分の意思で改善されるのだということと、どうやら自己というシロモノにも正解と不正解の形があるらしいという社会全体の共通認識が、自己啓発という導きのスタイルを生み出した。しかし自己啓発本をいくら読み漁ろうが理想の自己(おそらく社会的なステータスの占める割合がかなり大きい)に必ずしも到達できる訳ではないということ。2022/09/06

うぉ

15
引用・出展が記された学術的なスタイルで書かれている。自己分析という手法に疑問を持ち、それが自分だけの感覚ではないことを確認するために手に取ったので、失礼だと分かっていたが各章の結論以外は斜め読みした。自己分析ゲームは確かに楽しいし、ゲームに陶酔するのもよいが、どこかのめり込めない、そんな違和感を的確に言い当ててくれた一冊。2019/05/17

きいち

13
自分の内面が鍛えられる対象になる「自己のテクノロジー化」と、自己そのものを問わないで済ませる「再帰性のうちどまり」という自己啓発メディアの機能を丁寧に描き出す良書。「自己を鍛えるというゲームから降りることもできる」という視点にはあらためてうなずくのだが、そこで思い起こすのは、「ヒカルの碁」で苦しむ伊角が楊海から“自己コントロールは身につけられるスキルだ”と言われて一気に前に進めたあのシーン。僕は、まずは「誰もがゲームに参加することができる」という点を「希望格差」系の文脈とつなげて考えていきたいと思った。2012/07/09

チェリ

12
自己啓発という行為・文化そのものの歴史を分析した大作。世界的な自己啓発本からananまでを射程に捉え、巧みな文章力でまとめあげている。大局的な歴史感を捉える重要性を改めて感じられる内容であり、場当たり的に自己啓発本を読み漁ったのでは身につかない視座を得ることができる。自己啓発で何をするか、何を目指すかという根本論ですら時代と共に変わる。自己啓発本ってこうだよね、という決めつけは酷く安易なものだったのかもしれない。それにしても良くまとめたな・・・という印象が結局一番強かったが。2022/09/27

12
ネットの発達により個人の生き方が相対的に可視化されたことで自らの行為の自明性が揺らぐようになった。それにより自分はどうなるべきかという問い直しおよび自己反省を行い、自己を常に再構成しながら人々は生活しなければならなくなった。つまり生き方の選択肢が増えたことで自由という名の刑が昔よりも重くなったということだ。自己啓発メディアは終わりのない自己再構成に目標を設定し、自分探しの答えを提供してくれる。答えを与えられたことで不安は解消されるだろう。だがその平穏は目標自体に対する疑いを持つまでの一時的なものだ。2019/06/23

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