内容説明
「おれは首都圏連続殺人事件の真犯人だ」大手新聞社の社会部記者に宛てて送られてきた一通の手紙。そこには、首都圏全域を震撼させる無差別連続殺人に関して、犯人しか知り得ないであろう凶行の様子が詳述されていた。送り主は自ら「ワクチン」と名乗って、ひとりの記者に対して紙上での公開討論を要求する。「おれの殺人を言葉で止めてみろ」連続殺人犯と記者の対話は、始まるや否や苛烈な報道の波に呑み込まれていく。果たして、犯人の真の目的は――劇場型犯罪と報道の行方を圧倒的なディテールで描出した第27回鮎川哲也賞優秀賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナルピーチ
169
「人間=ウイルス」そんな定義の元に、無差別に殺人を繰り返す連続殺人犯。己の事を“ワクチン”と名乗り、大手新聞社に対して紙面上での公開討論を要求する。緊迫に満ちた紙上討論の先にどんな真相が待ちうけるのか…。小説を楽しむ際に気になる事。その1つが表題。なぜこのタイトルなのか。本作も読みながら考察するも、終盤までまったく解らなかった。『だから殺せなかった』このタイトルの真意が最後になって明らかとなる。その瞬間、驚きよりも切なさを感じてしまった。元新聞記者という経歴の著者が描く新たな社会派小説、今後も楽しみです!2022/07/31
シナモン
136
社会派小説は苦手で読みにくいとこもあったけど、とにかくタイトルの意味が知りたくて読み進めました。ラスト、明かされた真相に思わず「え!」と声が。想像できなかったー。犯人と記者との新聞紙面上でのやりとりはどちらにも頷けるところがあり、読み応えがありました。このやりとりにも犯人と記者じゃない違う側面があったんだな…。心揺さぶられる一冊でした。2022/10/24
hundredpink
68
慟哭 60歳の新人作家恐るべし。2021/12/24
あきら
65
最後になってタイトルの持つ意味を知る。 後半(特に最後の章)は、登場人物の発する言葉の熱量、怒涛の展開に鳥肌が立ちました。2022/01/31
annzuhime
63
図書館本。連続殺人犯と新聞記者との紙面上でのやりとり。なぜ殺人を起こすのか、なぜやりとりの相手に自分を指名したのか。そしてタイトルの意味。新聞社という未知の世界の話なのでなかなか読みづらさもあり時間がかかったけど…。ラストに知るタイトルの意味になるほどと思わせてくれる1冊。鮎川哲也賞受賞作。2022/05/27