岩波現代文庫<br> 家父長制と資本制 - マルクス主義フェミニズムの地平

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岩波現代文庫
家父長制と資本制 - マルクス主義フェミニズムの地平

  • 著者名:上野千鶴子
  • 価格 ¥1,584(本体¥1,440)
  • 岩波書店(2021/10発売)
  • ポイント 14pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784006002169

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内容説明

女性への抑圧はいったい何に由来するのか.著者は主婦・家事労働に着目しつつ,階級闘争でも性解放運動でも突破しえなかった,近代資本制社会に特有の女性抑圧構造を,理論的,歴史的に明快に論じてみせた.マルクス主義フェミニズムの立場を打ち出し,研究の新たな地平を拓いた記念碑的著作.

目次

PART1 理論篇┴第一章 マルクス主義フェミニズムの問題構制┴1 マルクス主義と女性解放┴2 市場とその〈外部〉┴3 マルクス主義フェミニズムの成立┴4 ブルジョア女性解放思想の陥穽┴5 近代批判としてのフェミニズム┴第二章 フェミニストのマルクス主義批判┴1 階級分析の外部┴2 〈市場〉と〈家族〉 その弁証法的関係┴3 性支配の唯物論的分析┴第三章 家事労働論争┴1 「家事労働」の発見┴2 愛という名の労働┴3 ドメスティック・フェミニズムの逆説┴4 日本の家事労働論争┴5 イギリスの家事労働論争┴第四章 家父長制の物質的基礎┴1 家父長制の定義┴2 「家族」 性支配の場┴3 家父長制の物質的基礎┴4 女性=階級?┴第五章 再生産様式の理論┴1 生産至上主義┴2 家内制生産様式┴3 「生産様式」と「再生産様式」の弁証法┴第六章 再生産の政治┴1 セクシュアリティの領有┴2 「家父長制」再考┴3 子供数の決定因┴4 再生産費用負担の不平等┴5 世代間支配┴6 娘の価値┴7 子供の叛乱┴8 家父長制の廃絶┴第七章 家父長制と資本制の二元論┴1 統一理論か二元論か┴2 ネオ・マルクス主義とフェミニズム┴3 資本制下の家事労働 統一理論の試み┴4 家父長制の配置┴5 二元論の擁護┴補論 批判に応えて┴PART2 分析篇┴第八章 家父長制と資本制 第一期┴1 工業化とドムスの解体┴2 再生産の「自由市場」┴3 「近代家族」の成立┴4 ヴィクトリアン・コンプロマイズ┴5 「家」の発明┴第九章 家父長制と資本制 第二期┴1 第一次世界大戦とⅠ期フェミニズム┴2 未婚女子労働市場の成立┴3 恐慌下の家族とケインズ革命┴4 高度成長期とⅡ期フェミニズム┴5 主婦の大衆化と「女性階級」の成立┴第十章 家父長制と資本制 第三期┴1 M字型就労┴2 「主婦労働者」の誕生┴3 パートタイム就労の「発明」┴4 日本資本制の選択┴5 資本制と家父長制の第二次妥協┴6 女性の二重役割┴7 生産と再生産の弁証法┴8 八〇年代の再編┴第十一章 家族の再編1┴1 人口という資源┴2 出生抑制と「再生産の自由」┴3 家族解体 危機の言説┴4 「中断─再就職」型のワナ┴5 再生産と分配不公平┴第十二章 家族の再編2┴1 移民労働者┴2 中断─再就職型の陰謀┴3 再生産のQC思想┴4 日本資本制の選択┴第十三章 結び フェミニスト・オルターナティヴを求めて┴1 国家・企業・家族 再編の時代┴2 経済学批判┴3 「労働」概念の再検討┴4 「自由な労働」と「労働からの自由」┴5 「労働」の転倒┴6 フェミニスト・オルターナティヴ┴付論┴脱工業化とジェンダーの再編成┴九〇年代の家父長制的資本制 ┴参考文献┴あとがき┴自著解題┴人名キーワード

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おたま

58
1990年に発行された単行本を読んだ。しかし、今でもその内容は古びてはいない。そして、凄まじい本でもある。これまでフェミニズムが問題にしてきたことを総括し、それに対して根底的な理論的根拠を与えている。とともに、マルクス主義がこれまで見落として来た欠落部分を理論的に明確化し、「資本制」とともに「家父長制」(とりあえず「男性が女性を支配することを可能にする社会的権力関係の総体」と定義する)こそが女性を支配する、物質的基盤をもったものとして見いだされる。これによって女性差別や家事労働の問題が解明されていく。2023/11/03

yumiha

39
「『個人的なことは政治的なこと』というのは上野千鶴子さんの本で学んだ」と書かれていた『台所で考えた』(若竹千佐子)に導かれるように本書へ。しか~し。前半の理論編 は、まるごとの論文で難儀した。でも、フロイトの呼ぶエディプスコンプレックスは、「単婚家族内の家父長制的な性支配のメカニズム」ということなどを教えられた。後半の分析編では、「家」の概念が確立したのが明治31年の帝国憲法であること(ほんの100年ちょっと前やん)や、出産・育児期で女性の就労が途切れることまでも近代資本制社会に絡めとられていたことなどを2025/02/14

がらくたどん

38
しばらく前から「家庭生活」とはどんな生活なのだろうとブツブツと考えている。自分が完全リタイアしたら我が家は直接的な労働力再生産の任を解かれたケアベースとなる。見事に本書の資本制的社会構造図で言うところの非「労働力資源」となった老人・病人・障碍者による私的集団なのだ。立ち位置がスッキリしたと思いきや。おそらく自分は「ケア労働」を購入する立場で家庭生活をマネジメントしていくだろう。だとすると、である。付論以下で提示されたケア労働の価格適性や従事者の選択肢の問題の渦の中に「当事者」として放り込まれてしまった。2022/02/14

Tui

32
おらおらで〜の著書若竹氏と上野氏との対談で知った。マルクス読んだことないし前半部はほぼお手上げ状態。でも後半部、すごい。家事、育児、介護など無償の労働に女性ばかりが従事している、そしてそれを暗に良しとする形で国政が行われている事実。在宅介護に関わる仕事をしている身からも、男性の不在または希薄さを以前から感じてはいたが、在宅だ在宅だと謳う今の医療政策は、有償サービス(=入院)から無償サービス(=現実ほぼ女性が担う介護)へ負担を押し付けてるだけじゃん、と思い知った。気付くの遅いよと女性からは叱られそうだが。2018/07/20

nbhd

26
最近まで、妻が育児休暇で仕事から1年間離れていたこともあり、内容は難しくてわからないところもあったけど、研究テーマについては身に沁みた、痛感した。日々、夫=労働力商品を会社に送り出し、家にいる妻は「商品化されない労働」をおこない、実家からは再生産!を求められるこの現実。マルクス大先生は、市場の外部にある家族には無頓着だったので、家族についても唯物論で分析しましょう!っていうのがマルクス主義フェミニズムだと理解した。そういえば、マルクスは資本論執筆のために家庭を犠牲にしていて、この本の内容と射影にある。2021/04/20

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