なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

  • ISBN:9784750516875

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内容説明

「病院に入りたいなら、頭がおかしいふりをしなくちゃ」

脳炎を精神病と誤診された過去を持つジャーナリストは、かつて全米医学会を大きく揺るがした心理学実験――精神病患者になりすまして病棟に潜入する「ローゼンハン実験」の調査・取材を開始する。やがて、実験に隠されたある奇妙な点に気が付く。次第に明らかになる衝撃の真実とは...!?

「これは患者5213号の初入院の模様である。名前はデヴィッド・ルーリー。39歳のコピーライターで、子どもが2人いる。頭の中で声が聞こえるという。しかしそこには問題があった。彼はコピーライターでもないし、ルーリーという名字でもない。じつはそんな人物は存在しないのだ。実在しない『デヴィッド・ルーリー』は偽患者だった。約50年前、医師が精神病患者とそうでない人を区別できるのかどうか確かめるために、精神科施設にみずから入院した8人の健常者のうちの最初の1人なのである」(本書より)

「調査報道の偉業。探偵小説のような説得力」(「エコノミスト」誌)



【目次】
■ はじめに

第1部
 第1章 鏡像
 第2章 ネリー・ブライ
 第3章 狂気の存在する場所
 第4章 狂気の場所で正気でいること
 第5章 謎が謎に包まれている謎の男

第2部
 第6章 デヴィッドの本質
 第7章 「ゆっくり進め、場合によっては足踏みのままでもいい」
 第8章 「わたしなら、正体を隠しとおせるかもしれない」
 第9章 入院許可
 第10章 マッドハウスで過ごした九日間

第3部
 第11章 潜入する
 第12章 ……結局、人が正気かどうかわかるのは正気でない人だけだ
 第13章 W・アンダーウッド
 第14章 クレイジーエイト
 第15章 第一一病棟
 第16章 氷の上の魂
 第17章 ローズマリー・ケネディ

第4部
 第18章 真実の追求者 
 第19章 「ほかの疑問はすべてここから生まれる」
 第20章 標準化
 第21章 SCID

第5部
 第22章 脚注
 第23章 「すべては君の頭の中に」
 第24章 影の精神衛生ケアシステム
 第25章 決定打
 第26章 疫病
 第27章 木星の月

■ エピローグ

■ 謝辞
■ 訳者あとがき
■ 原注
■ 図版・資料許諾

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

こばまり

51
思いも寄らぬ展開でサスペンス小説のような面白さだった。DSMはICDに類したものとの理解していたがその改訂作業は泥臭く、このように賛否両論あるとは知らなかった。精神医療は心理、人文、社会学との親和性が高い独特な科学であると再認識。正気と狂気の境目は曖昧。2023/12/02

泰然

30
探偵小説の如きスリリングさと脅威の調査プロセスで迫る、精神医学と精神病院の内幕。本書は著者の自己免疫性脳炎の経験エピソードも挟んで人間の正気と狂気の境界とは何かと、ある研究者の精神病院潜入実験と同論文の謎、更に彼自身の人間像に迫る。さながらタペストリーを作るような緻密な構成はナラティブが頻出する現代にあって秀逸であるし、超自然的な偏見を取り払って人間理性の自立を目指す啓蒙思想の影響と共に迷走する精神医学の闇を描き、読書を「無知の知」の世界へ誘う。原題の口語訳「なりすましの達人」が暗喩する〆は唸らされる。2021/06/20

くさてる

27
かつて自己免疫性疾患を患い、正気と狂気の境目をさまよった著者は70年代に発表された論文に興味を持つ。それは健康な人々を患と偽らせて精神病院に送り込む実験を通じ、当時の精神疾患の診断の曖昧さを暴くものだった。その論文がきっかけで、精神医療の改革が始まったのだが、著者が調査を始めると、おもわぬ事実が浮かび上がってくる……という内容で、ミステリばりに面白く、同時に「狂気と正気の境目は」「精神医療の問題点」「患者と家族にとって必要な支援」とはというテーマも次々に浮かび上がってくる興味深い内容だった。おすすめです。2021/07/07

本詠み人

25
原題The Great Pretender。かつて精神疾患と誤診されかけ、自己免疫性脳炎を完治させた著者。自身は助かったが、誤診されたままならたまったもんじゃない!そこで偽患者デヴィッド・ルーリーになりすまし精神科病棟に潜入した実体験の論文「狂気の場所で正気でいること」=ローゼンハン実験(1973年科学誌『サイエンス』に掲載)を見つける。当時のアメリカ精神病棟の酷い環境や最悪とも思える治療法の記述にゾッとする。この論文がその後の精神科医療に影響を与え、後のDSM診断の改定にも繋がったが…。コメント欄へ⇒2021/06/25

香菜子(かなこ・Kanako)

22
なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験。スザンナ・キャハラン先生の著書。正気と狂気を見極めることができない精神科医。精神疾患である人とそうでない人を見極めることができない精神科医。もしそうであれば精神医学に意味はあるのと疑問に思う人がいても不思議ではない。でも狂気に苦しむ人がいて精神疾患で苦しむ人がいることは紛れもない事実。精神医学や精神科医に完璧を求めたところで仕方のないこと。2022/08/15

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