内容説明
独自の創作理論を打ち立てた、二大巨人による実践的文学論。文学の<現在>はここから始まる――独自の文学世界を打ち立てた二大巨人=小島信夫&森敦による長篇対談。昭和20年代半ばからの知己である二人が、これまでの交遊を振り返りつつ、創作理論の<現在>を縦横に語り合う。悲劇と喜劇、内部と外部、小説におけるモデル問題、夢と幻想、演劇論など、多岐にわたるテーマを通して、二人の文学の根柢に迫る、スリリングでアットホームな試み。幻の未刊長篇対談、待望の文庫化。
◎小島信夫「この対話は色々の問題をもってきて、互いに論じるというようなものとは大分ちがう。問題も材料も互い自身である。これは息苦しいものであるし、空を切ることもあるので、ときどき散歩をすることもある。ときには、自分自身をダマす必要もある。(略)今月、悲劇、喜劇という言葉が出現して、私は刺戟をうけた。まどろみかけた目がひらいた思いがした。(略)今回のような談話の中での文脈の中でおどり出たのだから、これは生きた言葉である。生きた言葉であるだけに、今後何度も俎上にのぼり、たのしまなければならない。」<「第四回・追記」より>
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
フリウリ
13
創作に関してとても重要なこと、創作を刺激することを、行きつ戻りつ、お二人が語り合いますが、対談だけでなく、その後の電話や手紙などが次第に含まれていく構成は、小島信夫らしくてマーヴェラス。しかし、内容を理解するのは、本当に難しい。少しずつ読んで、寄り道もして、読み終えるまで数年かかっているはずですが、ようやく坪内祐三の解説に到達し、やはり本書について語るのは「本当に難しい」と坪内さんも言っているようで、(勝手に)背中を押された気分です。また最初から、読み始めたいと思います。102025/10/12
げんがっきそ
5
この小説家ふたりの創作の方法は対極に位置し、そのためによりお互いの話が活きているのではなかろうか。小島信夫は書いている内容に引きずられていき広がっていく。彼にとってそれが創作意欲のひとつになる。森敦の小説を読んだことがないので決めつけることはできないが、彼は規定した枠内におさまるように小説をしっかり書き切るタイプと見受ける。そこには数学があり形式美がある。小島信夫はデタラメを楽しんでいるように思う。デタラメといっても、逸脱する枠があってこそで、そのために森敦を訪ねていたのではないかと、勝手な推測をする。2020/06/28
hitotoseno
4
長年続く交友を振り返りつつ、森が「内部と外部」「密閉と非密閉」といったキーワードを打ち出し対談をリードして、小島がそれに応えていく。一見単なる思い出話かと思いきやいつしか話題がそれていき、かといって外部に終始するわけでもなく、そこには必ず二人にまつわる話、つまり内部が付属している。ひと月に一回行われた対談の後、小島が追記と称して解説とも感想とも取れないおかしな文章を載せているのだが、これも面白い。脈絡なく書いている様がまるで対談の後もくすぶる考えと取っ組みあっているようだ。それが一種の小説にも見えてくる。2012/02/05
yoyogi kazuo
3
坪内祐三の解説にもあるとおり、あの大長編問題作「別れる理由」の連載終了直後に掲載された対談であり、実質的に続編とも呼べる。内容的にも、「別れる理由」と同じくらい濃密で難解な雑談。さらに同時期に書かれた「返信」や「月光」などの短編も併せて読むとますます頭が混乱する。最近の群像に故坪内祐三の夫人の手記が載っていて、「別れる理由が気になって」の連載の頃は本当にキツそうだったと書かれていて、この解説もかなりキツそうに書かれている理由がわかる気がした。2021/07/03
Tonex
3
両者とも何を言ってるのかほとんど理解できないが、お互いの間ではちゃんと話が通じているらしい。なんかシュール。小島信夫の小説は、頭に浮かんだことを思いつくままに書いてるだけのように見えるが、明確な文学的方法論にしたがって書かれていることがわかった。森敦の小説は全然読んだことがないので、機会があれば読んでみたい。2015/02/04
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