内容説明
16歳から27歳までの385句を収録した第一句集。
あたらしくって、なつかしい。サイダーから噴き出す、あの夏の虹みたいに、十七音を駆け抜ける、カラフルな言葉たち。ひりひりと光り出す、やさしい記憶。
─神野紗希(俳人)
【収録句より】
春光にさらして角砂糖かわいい
さっきまでピアノの部屋の蝶だった
桜蘂降る自転車は海の色
ラズベリータルト晴天でよかった
シェパードのにおいして今日も雷
蛇衣を脱ぐや瞳に爛と艶
コンビニの花火がしょうもなくて笑う
目をほそめ三日月を研ぐペダル漕ぐ
抱けばきみ定形外や藍の花
漫才師去る足揃う三十三才
【著者】
木田智美
1993年大阪府生まれ。2009年、俳句甲子園出場をきっかけに俳句を始める。俳句雑誌「奎」同人。
目次
Ⅰ ひかり
Ⅱ 水
Ⅲ エナメル
Ⅳ 絵の具
Ⅴ たぶん
Ⅵ 艶
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumicomachi
3
歌集や句集を読むとき、好きな作品、気になる作品の目印になるように貼っていく付箋。ほぼ全ての句に貼ってしまうので意味がなくなってしまうという体験をひさびさにした。かわいい、おいしい、あかるい、句集だと思う。もちろんただただ向日的なだけではないし、そうとうな技術もあるのだと思うけれど。〈さっきまでピアノの部屋の蝶だった〉〈水の秋てがみ書くにはきれいな手〉〈泣けば泣きつづけるの簡単ラベンダー〉〈洋梨を剥くパーティは明日にして〉〈マイナーなバンドの曲や青嵐〉〈空港に歌集売られて檸檬の頃〉など。2021年4月発行。2021/06/11
空の落下地点。
1
アルファベットと人名の詠み込みには希望を貰います。俳句がずっと味方のようにも感じられます。俳人は神様じゃない、平面上に生きている人間だ。2024/01/04
豆ぐみ
0
2021年書肆侃侃房刊。1993年生まれ「奎」同人の第一句集。特に好きな句は〈風船のいくつかアトリエの天井/ゆびきりはあなたがほどく瑠璃唐草/ジンジャーの花や発行日は未来/スーパーカブに乗れば敵なし雲の峰/古着屋のTシャツ虹色にならぶ/水に陽が射してイルカの名は疾風/太陽の塔にバナナの引っかかる/月光と血とその他からできている/白熊の毛の一本に棲む光/更衣室タイツのデニールの話/わかめ和えわかるよ奈良の訛りなら/夜店抜けこんなに短かったっけ〉などなど。2021/05/19